秋元康は、マーケティングをしない。天才に学ぶ企画の方法

秋元康の仕事額

秋元康氏といえば、AKB48の生みの親としてよく知られている。

そして実は、「おニャン子クラブ」という、私の親の世代が20代くらいの時にブレイクしたアイドルグループの生みの親でもある。

AKBはどちらかというと私より下の世代で流行っているように思うし、「おニャン子クラブ」は私の親の世代なのでほとんど何も知らない。世代をまたいでアイドルグループのヒットを生み出している秋元氏の仕事に、前々から不思議な気分にさせられていた。

秋元氏はほかにも、美空ひばりの『川の流れのように』の作詞をしていたり、『とんねるずの皆さんのおかげでした』の企画を手掛けていたりしている。誰もが知っているエンターテインメントを数多く生み出してきた「エンタメ界の巨人」だと言える。

それでは、秋元氏がメガヒットを続々飛ばす秘密とは一体何なのか? そんな興味を持ち、『秋元康の仕事学』を読んでみた。

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『秋元康の仕事学』はこんな本

勝間氏との対談部分

本書は、メインとサブの2つの内容で出来ている。メインの方は、NHKの番組「仕事学のすすめ」の取材班による、秋元氏へのインタビュー。取材班は、いわば我々「凡人」の目線にたって、秋元氏にあれこれと質問をぶつけ、その答えをまとめている。質問の内容を簡単に例示すると、

  • どのように日常の中でネタを探して企画に結び付けているのか
  • 多数の人が関わる企画を走らせる上で、心がけるべきことは何か
  • どのように人脈を作ればよいのか

等々。私が秋元氏に出会ったらつい訊いてしまいそうな、なんとなくレベルが低いけど、絶対訊いてみたい質問をいくつもしてくれている。

サブのほうのコンテンツは、勝間和代氏による秋元氏へのインタビュー。こちらは、巨人目線 vs 巨人目線の、豪華な対談である。

2人が意識しているように、彼らのモノの考え方はかなり違っていて、勝間氏が分析的・データ主義的であるのに対し、秋元氏は直観的・自分主義的である。真逆とも思える2人が語り合うからこそ、秋元氏の特性が浮かび上がってくる。

秋元康の思考・行動に触れる

予定調和を壊す

秋元氏は通常どのように日常を送り、どんな見方で世の中を見て、どのように着想を得て、どのように仕事に変えていっているのか。その追体験ができるのが、本書の一番大きな魅力である。

例えば、秋元氏は「予定調和が裏切られたときに、人は面白いと思う」のだと語る。この名言に、秋元氏のエンターテインメントに対する考え方が凝縮されているように思う。「○○って、こういうもんだよね」という既成概念や、「○○って、こういう結末になるよね」という人々の予想を、根本からひっくり返したい。秋元氏はそういう思いを持っている。

だからこそ、秋元氏は敢えてマーケティングをしないという。マーケティングから見えてくるものは、過去の事例であり、それはつまるところ、人々の予定調和の基礎部分を担うものとなっていく。だから、いくらマーケティングをしようとも「意外性」を見つけることはできない。秋元氏はそのように考えており、秋元流思考の根幹がそこにある。

AKB・着信アリ・美空ひばり…の裏話

舞台裏

ところどころに、メガヒットが生まれる瞬間の話が盛り込まれており、それらのファンにとっては、その逸話が読めるだけでも、非常に楽しめるのではないかと思う。

たとえば、AKB48の構想時に、秋葉原の劇場が拠点として選ばれた経緯はなどんなものだったのか。

ホラー小説『着信アリ』の着想は、どんな出来事から生まれたものだったのか。

美空ひばりの『川の流れのように』の歌詞は、なぜ「川の流れのように」なのか、等々。

これらの作品にそれほど思い入れが無い私としても、ヒットの生まれる瞬間という「舞台裏」の話は、あまり聞けるものではないのでレア感を覚えつつ読み耽ってしまった。そのどれにも共通しているのは、「きっかけはふとした出来事」だということである。そこから人の心に突き刺さるたくさんの企画を生み出すわけだから、秋元氏の能力には憧れるばかりだ。

こんな人におすすめ

さて、途中でも触れたように、秋元氏はマーケティングをしないのだという。その理由は、マーケティングは過去の寄せ集めであり、そこから二番煎じ三番煎じが生まれることはあっても、未来のヒットは生まれてこないから。

この話は、マーケティングの重要性を考え続けてきた私にとってはそこそこ衝撃的であった。ヒットとマーケティングは両立しないと、エンタメの巨人秋元氏が言うのだから。

では、秋元氏にとってヒットを生み出す手法とはどのようなものなのか? 本書で語られているそれは、常人には真似できない奇想天外なものではなく、あきれるほどシンプルで理解可能な方法である。マーケティング至上主義に染まってしまった人は、是非知っておくことをおすすめする。本書『秋元康の仕事学』を一読すれば、氏の企画術の中核部分が学び取れることと思う。

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