経済のしくみを理解したい人のための本。高校生にもオススメ

じつはよく知らなかった経済のことがスッキリわかる本

突然だが、テレビのニュース等で「天下り」という言葉を聞いたことがあると思う。何か社会問題になっているということもきっと知っていることと思う。

では、「日本の民間企業が農業・漁業に参入できないのは、役人の天下りが原因」と言われたら、貴方は「天下り」と「参入困難」の因果関係を説明できるだろうか?

また、「原発賠償法は天下りの産物で、しかも銀行の損を消費者に肩代わりさせるという、とんでもないアイデアだ」と言われたら、

「天下り」が原因で原発賠償法ができ、その内実が銀行の損失転嫁であることを、あなたは説明できるだろうか?

もしなかなか説明できないようなら、貴方は経済の仕組みにちょっと疎い人かもしれない。実のところ私がそうである。「天下りとは何か」くらいはギリギリ説明できたとしても、具体的にどのような問題を引き起こしているのか、そこまではよく分かっていない。

私は自分を反省し、もう少し経済や社会の中身・動きに強くなりたいと感じて、次の本を読んでみた。『じつはよく知らなかった経済のことがスッキリわかる本』である。

本書は経済の入門書で、高校で習う経済の学習範囲を噛み砕いて、社会情勢を織り交ぜた、くらいの内容になっている。それだけだと普通の本だが、本書がちょっと違うのは、日本の成長を阻害する「役人の天下り」について解説し、具体的な批判を加えていること。

この記事では天下りがどのような点で日本の成長を阻んでいるのか、著者の言っていることを私なりにまとめつつ、本書の内容を紹介する。

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民間企業の農業・漁業への参入を阻んでいるのは、天下り

官僚

日本では農業・漁業は個人が中心に行っている。しかしながら、個人でできることには限界がある。大規模農業は難しいし、収穫から加工・流通までを一本化して低価格化・高品質化を狙うのも難しい。収入を安定させるのもままならないから、若い人がやらなくなってきているのも問題である。

その解決方法は民間企業が参入することだが、農業・漁業への民間企業の参入は農林水産省が反対している。

その背景には天下りがある。農水省の役人は農業・漁業関係団体(個人の農業・漁業従事者の集まり)に天下りをしているが、もし民間企業が農業・漁業をするようになるとどうなるか。

企業は何でも自分でやってしまうので、農業・漁業に対する国の支援が必要なくなり、農水省の権限・予算が減っていく。そうなると農水省に助けてもらっている団体や組織は農水省の予算で潤うことができなくなるので、天下りを受け入れなくなる。天下りできないのは困るので、農水省は民間企業の参入に反対せざるを得ない。

原発賠償法で銀行の損失を肩代わりさせられるのも、天下りのせい

官僚

原発賠償法は、銀行の多額の損失を電力利用者(消費者)に肩代わりさせるひどいアイデアである。どういうことかというと…

本来なら、東日本大震災時の原発事故に伴って生じた巨額の賠償により、東電は破綻し、法的な整理に追い込まれるはずであった。もし東電が破綻すると、最も損をするのは東電にたくさんのお金(5兆円といわれる)を貸していた銀行である。貸付金を回収できなくなるためだ。

ここで原発賠償法が登場して何をしたかというと、東電の賠償金をいったん他の電力会社と国の資金で立替える。そして、その後長期間かけて東電の利益から立替え分を返済してもらうという仕組みを作った。

この仕組みであれば、銀行は貸付金を回収できないということが無いので一切損が無い。東電が破綻しようとすると国が助けてくれるので、ノーリスクハイリターンの美味しい商売である。そして、最終的に誰が賠償金を払うことになるのかと言えば、電力使用量を値上げされて苦しむ消費者である。

この法律ができた背景にも天下りがある。この法律を考えたのは財務省と経済産業省で、これらの役人は銀行・銀行傘下への天下りすることが多い。そこで銀行・銀行傘下の利益を守るため、役人たちは銀行が損をしないシステムを作ったのである。

「なぜそうなのか?」

「なぜ?」を考える

以上のように、「役人が天下り先を確保したい」という動機が、民間企業の農業・漁業への参入を阻んだり、銀行の損失を電力消費者に肩代わりさせたりする、おかしな流れをつくっている。

ここで「だから役人はダメだ、官僚はダメだ」と感情的になってしまうと、何も改善していかない。大事なのは、著者も言っているように「なぜそうなのか?」を冷静に考えることである。

天下り先を確保したいと役人が考えるのは、日本の省庁の人事システムが終身雇用をしていないことに起因する。年を取ると外に出て行かなくてはならないので、次の受け入れ先の確保に躍起になるのは当然だろう。

だから日本にとって必要な政策は、天下りを全面禁止にすると同時に、役人を定年まできちんと雇ってやるというシステムを作ることである。人件費は上がってしまうが、天下りが民間企業の活動を阻害したり、銀行の損を他人に肩代わりさせる政策を生み出してしまうよりずっとマシだ、という感覚を持たければならない。

まとめ

本書『じつはよく知らなかった経済のことがスッキリわかる本』では、以上のような話が「経済の先生」と「就活中の学生」との対話という形で繰り広げられている。先生の語り口は淡々としてよどみが無く、分かりやすい。学生のほうは読み手の目線であれこれと質問をしたり、たまに鋭い突っ込みをいれたりする。

天下りと日本社会の関係のほか、不況の原因と対策、為替の決まり方、国際情勢など、話題が盛りだくさんである。経済の予備知識は前提としていないので、高校生くらいでも十分に読み進められるものと思う。

世の中の仕組みと動きを一通り眺められるようになりたい人の「とっかかりの一冊」として、おすすめしておきたい。

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