『東京23区内に月1万5千円以下で住んでみた』の感想。絵が古くても断然面白い!

image credit: Hajime Taguchi

私にも違う人生があったかもしれない。

そう考えてしまうことはないでしょうか。

私はよくあるんですね。たとえば、もう8年くらい前のことですが、進学先として福岡を選ぶか、東京を選ぶかを決めなくてはならない時がありました。

色々と思い悩んだ結果、私は福岡を選択しました。そしてそれ以降、福岡に住み続けています。

でも、もしあの時東京を選んでいたら? 今とは全く違った生き方をしていたかもしれない。異なる大学院で学び、異なる人々と出会い、異なる会社で、異なる価値観のもとに、異なる人生を送っていたかもしれない。

そして実を言えば、福岡に住むことを決めるよりも前から、私には東京に住んでみたいという気持ちがずっとあったのです。田舎者にありがちな、都会への憧れかもしれませんが、東京という場所への強い思いがあり、それは今でも心の中でくすぶり続けています。

そして、私はいつもそうするのですが、自分が感じている欲求不満を、他人の人生を追体験して解消する(あるいは、誤魔化すorz)ことにしました。

それで今回手にとったのが、田口始さん作『東京23区内に月1万5千円以下で住んでみた』です。

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絵が古臭い!でも内容は最高に面白い

本書は、鹿児島から福岡に一時移り住み、その後すぐに上京を決意した作者の、若い頃の話をまとめたものです。

私はコミックエッセイやマンガを選ぶとき、絵が好みのものかを重視します。その基準からいくと、この本は全く当てはまりませんでした。絵の印象が非常に古くて、昭和な感じがあります。だから始め少し躊躇しました。

でも、今回は本作のタイトルに惹かれました。東京、それも23区内に月1万5千円以下で住んだだって? どうやって? そして、あらすじを読む限りでは、田舎を出てあてもなく上京し、職を転々としながら生活していった人の話らしい。一体この作品の主人公はどんな人で、東京でどんな人生を送ったんだろう。

そこには「私が送るかもしれなかった人生」があるのかもしれない。

そう思って購入し、読んでみたのでした。

素直な感想として、面白い!面白かったです。作者の田口氏は、まだ20歳にならない歳のうちに、東京近辺で露天商(お祭りのテキ屋)、新聞配達、飲食店の厨房の仕事などに就いたほか、短期間ではあるもののホームレス経験までしてしまいます。

このような明日お金があるかどうかも分からない生き方は、非常にハードであることは想像がつきますし、本作からも作者がかなり大変な思いをしたことが伝わってきます。でも、こんな経験、私もしてみたかった・・・という思いが少しよぎります。

東京での、「貧しいけれどぶっとんだ生き方」を、このコミックエッセイを読んで共有させてもらいました。

住み込みの仕事で食いつなぐということ

作者は住む家があったわけでもなく、友人がいたわけでもなかったので、基本的に東京で住み込みのアルバイトや正社員の仕事を探します。住み込みであるため、同じ職場の人たちとの共同生活も多かったようです。

様々な人との出会いがあり、少し悲しい別れもあります。人の温かさが読み取れるシーンもありました。

はじめとてもあたりのキツかった厨房の副主任が、作者が無一文であることを知って、ポンと1万円を貸してくれたりとか。東京の人は冷たいといいますが、このコミックエッセイに出てくる人々は、人間味や情を感じさせてくれる人が多いです。

あと、「露天商」という仕事は私は全く知らなかったので勉強にもなりました。お祭りの出店で働いている人たちは、こういう「住み込みで働く人」の一人だったりするわけですね。

さらに、「お祭りのクジは実際あたるのか?」といった裏話も本書では披露されていたりします。

本書のちょっと変わった楽しみ方

私なりの本書の楽しみ方です。読み進めていると、東京の地名がいくつか出てきます。それらを Google のストリートビューで検索して、実際の街の様子を見ながら読むと、より深くストーリーを味わえると思います。

上記の画像は、著者が一晩を過ごしたというタイヤ公園。その場所は、少し探すとすぐに見つかりました。

ストリートビューで見ると、公園内にタイヤで出来たゴジラのような怪獣がいるのが分かりますが、マンガ内でもしっかり描写されています。

本作の内容は今から10年以上前のものですが、著者はいまでも付近を通ると、当時のことを思い出すとのこと。辛かった、でも必死で生き抜いた、という思いが巡って、切ない気持ちになってしまうのだと想像します。

人生を再スタートするのに必要なお金はいくらか?

もし私が、あるいは貴方が、東京で人生を再スタートするなら、最低いくらの資金が必要でしょうか。

100万円くらい? いや、そんなに多くなくとも、50万円くらいあれば、狭い部屋を借りて、仕事を見つけるまでの間暮らせるでしょうか。

「再スタートに必要なお金の額とはいくらなのか」。実は、それが本書のひとつのテーマになっています。作者が東京でドン底まで落ちて、そこから再起しようと決断したとき、手元にあったお金はいくらだったのか。

答えはストーリーの中で判明します。気になる方は、是非読んでみてください。

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