アガルートの予備試験対策を調べていくと、主力の「予備試験最短合格カリキュラム」に「フル」と「ライト」という2つのプランがあることに気づきます。
その価格差は約30万円。決して小さくない金額ですから、どちらを選ぶべきか迷ってしまいますよね。
公式サイトには比較表が用意されているものの、項目の数が多く、どの違いが自分にとって重要なのかを読み取るのは簡単ではないでしょう。理解があいまいなまま価格だけで決めてしまえば、受講開始後に「こんなはずではなかった」と悔やむことになりかねません。
そこで今回は、フルとライトの違いを整理したうえで、見落としやすい注意点と選択時の考え方をお伝えします。この記事を読み終える頃には、どちらのプランを選ぶべきか、根拠を持って判断できるようになっているはずです。
※本記事は2026年7月時点で入手できる情報を基に作成しています。
フルとライトの違い

まず全体像です。現行の予備試験最短合格カリキュラム(2028・2029年合格目標)について、フルとライトで差がある項目を一覧にまとめました。
| 項目 | フル | ライト |
|---|---|---|
| 受講料(税込) | 1,298,000円 | 998,800円 |
| 講座 | 全講座 | 5講座が対象外 |
| オンライン添削 | 206通 | 174通 |
| 質問制度 | 100回 | 50回 |
| パーソナルコーチング | あり | なし |
| オフィスアワー | あり | なし |
| 口頭論文添削 | あり | なし |
| 合格特典(全額返金) | 対象 | 対象外 |
逆に言えば、ここに挙げた以外は共通です。
中核インプットである総合講義300も、論文対策の柱となる重要問題習得講座や予備試験論文過去問解析講座も、選択科目対策も、製本テキストやデジタルブックも、バーチャル校舎のゼミ・オンライン自習室も、両プランの間に差はありません。
教材の中心部分はどちらを選んでも同じ、とまず押さえてください。
公式の位置づけも確認しておきましょう。アガルートはフルを「これから予備試験・法科大学院入試に向けて学習を開始する方」向け、ライトを「他校からの乗り換えを検討している方」「学習時間がなかなか確保できない方」向けとしています。
つまり設計思想として、フルは初学者向けの標準形。ライトは学習経験や時間的制約に応じて講座とサポートを絞った選択肢、という関係です。
では、約30万円(税込)の差額で具体的に何が変わるのか。ここからは「講座」「添削・質問・個別サポート」「合格特典」の3つの軸に分けて見ていきます。
ライトに含まれない講座
ライトで対象外となる講座は5つです。それぞれの役割とあわせて確認しましょう。
- 短答絶対合格!スキル習得講座:短答式の勉強の仕方を学ぶ
- 一般教養科目対策講座:短答式の一般教養科目のインプット
- 旧司法試験 論文過去問解析講座:旧司法試験の過去問を使った追加の論文演習
- 予備試験・法科大学院入試答練:予想問題を解く答案練習会
- 法律実務基礎科目答練:法律実務基礎科目の予想問題を解く答案練習会
一覧を見て「短答対策が削られるのか」と不安になったかもしれません。しかし、短答対策の本体である短答知識完成講座・短答過去問解説講座・短答セルフチェックWebテストは、いずれもライトに含まれています。
対象外となる「スキル習得講座」は勉強の仕方を学ぶ講座であり、短答の教材そのものが抜けるわけではありません。
一般教養科目対策講座はどうでしょうか。予備試験で一般教養科目が出題されるのは短答式のみで、論文式にはありません。
しかも短答式の配点は、法律7科目が210点に対し、一般教養科目は60点。配点の大半を法律科目が占める構造を考えると、この講座の有無が合否を直接左右する場面は限られる、というのが私の見立てです。
旧司法試験の論文過去問解析講座もフル限定ですが、これは予備試験の過去問に追加して解く演習素材です。論文過去問の中核をなす「予備試験論文過去問解析講座」はライトでも欠けません。
注目したいのは、残る答練2つのほうです。この2つが抜けることが何を意味するかは、アガルートが提示する「論文力を高める5ステップ」から理解できます。
- 総合講義300で基礎知識を身につける
- 論文答案の「書き方」で短い論文のトレーニングを行う
- 重要問題習得講座で実践を積む
- 論文過去問に取り組む
- 答練で予想問題を解いて応用力を身につける
1から4までは、ライトにもそのまま含まれます。前述の予備試験論文過去問解析講座が4の柱となることで、過去問演習までは変わりなく取り組めるんです。
ライトで抜けるのは、5の答練による総仕上げの段階。つまりライトは、基礎から過去問までの骨格は備えているものの、本番を想定した予想問題での総仕上げが手薄になる構成なんです。
添削・質問・個別サポートの差
数字だけ見ると添削32通・質問50回の差ですが、内訳を見ると印象が変わります。
- オンライン添削:フル206通、ライト174通(差は32通)
- 差の32通は、答練2講座に付く添削の通数と一致
- 質問制度:フル100回、ライト50回
- 個別サポート(パーソナルコーチング・オフィスアワー・口頭論文添削)はフルのみ
添削の差である32通の正体を調べてみると、前述した答練2講座に付く添削の通数とぴったり一致します。つまりライトの添削は「フルより薄い」というよりも「答練が付かないから答練の添削もない」と捉えるのがより正確でしょう。
論文答案の「書き方」、重要問題習得講座、そして予備試験論文過去問解析講座の90通の添削は、フルと同じだけ受けられます。ここは公式の比較表を眺めるだけでは気づきにくいポイントで、私自身、添削通数の内訳を突き合わせて初めて構造が見えた部分でした。
質問できる回数は100回と50回で、単純に半分です。年単位に及ぶ学習期間の中で50回をどう評価するかは学習スタイル次第でしょう。ただ、独学の経験がなく疑問が次々と湧きやすい初学者ほど、残り回数を気にしながら質問する状況はストレスになりえます。
そして個別サポートの差も見逃せません。学習の方向性を担任のプロ講師に相談できるパーソナルコーチング、講師に直接相談できるオフィスアワー、双方向でやり取りしながら答案を見てもらう口頭論文添削は、いずれもフルだけのサービスです。
オフィスアワーの予約枠と口頭論文添削は合わせて月1回、パーソナルコーチングはそれとは別に月1回といった利用の枠はありますが、ライトにはこうした個別サポートそのものがありません。
バーチャル校舎の自習室やゼミはフル・ライト共通で使えます。他方、講師に直接相談できるオフィスアワーはフル限定です。そのためライトで講師に個別に尋ねる主な手段は、講座内容を質問できるオンライン質問サービスの50回になると考えてください。
合格特典があるのはフルだけ
両プランの違いとして最後に押さえたいのが合格特典です。
- 対象はフルのみ(ライトは対象外)
- 対象年度の予備試験に合格し、一定の要件を満たすと受講料(税抜価格分)が返金される
フルには、対象年度の予備試験に合格した場合の合格特典(全額返金)が付いています。ライトはこの特典の対象外です。
受講料が高額なカリキュラムだけに、「全額返金」の印象は強烈でしょう。この特典をプラン選びでどう扱うべきかは、注意点として後述します。
選ぶ前に知っておきたい注意点

違いを把握したところで、判断を誤らせやすいポイントを3つ指摘します。いずれも、私が調査の中で「これは事前に知っておかないと危険」と感じた点です。
全額返金を選ぶ理由にしない
最初の注意点は、フルの合格特典との距離感です。
- 返金されるのは予備試験に合格した場合だけ
- 合格体験記の提出やインタビュー出演などの要件がある
- 氏名は実名で公表される
- 返金は税抜価格分で、源泉所得税も控除される
「フルなら合格すれば返金されるのだから、実質的にはフルのほうが安い」。そんな計算をしたくなる気持ちはよくわかります。私も価格を見比べながら、最初に頭に浮かんだのはこの損得勘定でした。
しかし、この計算には前提が多すぎます。まず、予備試験に合格しなければ話が始まりません。最終合格率が数%という国内屈指の難関試験ですから、返金を受けられるのは一部の受講生に限られるのが現実です。
さらに合格しても、体験記やインタビュー、実名での公表といった要件を受け入れる必要がありますし、振り込まれるのは税抜価格分から源泉所得税を差し引いた金額であって、支払った税込受講料の満額ではありません。
特典そのものは魅力的ですし、学習のモチベーション維持に役立つ面も確かにあるでしょう。ただ、それは「合格できたら受け取れるボーナス」であって、確実な値引きではないのです。
フルとライトの比較は、あくまで約30万円の差額と講座・サポートの中身を天秤にかけて行うべきだと私は考えます。
ライトで欠けるのは「答練」と「伴走」
2つ目の注意点は、ライトで欠けるものの正体を見誤らないことです。
- 予想問題での総仕上げ(答練とその添削)
- 講師による個別の伴走(コーチング・直接相談・口頭添削)
- 短答の勉強法講座・一般教養対策・旧司法試験過去問という補助的な講座
先に見たとおり、インプットから論文過去問演習までの骨格、主要な添削、製本テキスト、ゼミや自習室は両プラン共通です。その意味で、ライトは決して「手抜き版」ではありません。「安いほうは中身も薄いはず」という先入観は、このカリキュラムには当てはまらないんです。
では何が欠けるのか。ひとつは、本番形式の予想問題で仕上げる答練です。そしてもうひとつが、学習の方向性を定期的に確認してくれる「伴走者」の存在。
私は後者のほうがより決定的な差だと考えています。毎月のコーチングも、講師への直接相談も、口頭での論文添削も、ライトにはありません。これは、たとえるなら「詳細な地図と装備一式を渡された後、ガイド無しで孤独に登る登山」のようなものでしょう。
地図がどれほど優れていても、自分が今どこにいて、このペースで合っているのかを確かめる術がなければ、長い道のりでは不安が膨らみます。年単位の学習を独力で計画し、修正し続けられる自信があるかどうか。ライトを選ぶ際の実質的な分かれ目はここにあります。
後からフルに変更する手もある
3つ目は注意点というより、決めきれない人に知ってほしい公式情報です。
- 差額を支払うことで、オプションの追加やアップグレードができる
- 適用条件などの詳細はカスタマーセンターへの相談が必要
- 無料の受講相談や資料請求・無料体験も判断材料にできる
実は差額を支払うことで、オプションの追加やアップグレードが可能です。つまり、ライトで始めて、学習が本格化した段階でフルへ切り替える道も想定されています。
「答練や個別サポートが必要かどうか、始めてみないとわからない」という人にとって、これは心強い逃げ道になるでしょう。
ただし、適用条件や手続きの詳細までは公表されておらず、公式もカスタマーセンターへの相談を案内しています。後からのアップグレードを想定してライトを選ぶなら、申し込み前に条件を問い合わせて、確認しておくと安心です。
また、そもそも迷いが深いなら、無料の受講相談で直接質問したり、資料請求・無料体験でサンプル講義とテキストを確かめたりしてから決めても遅くありません。約100万円からの買い物です。無料で判断材料を増やせる手段は、遠慮なく使い尽くしましょう。
あなたに向いているのはどちらか

ここまでの整理を踏まえて、タイプ別の判断基準を示します。
フルが向いている人
次のような人には、フルを軸に検討することをおすすめします。
- これから法律学習を始める初学者
- 学習計画や勉強の方向性を相談しながら進めたい人
- 予想問題まで使って論文を仕上げたい人
- 質問や相談の機会を多く確保しておきたい人
アガルートがフルを「これから学習を開始する方」向けとしているのは、すでに触れたとおりです。
法律を初めて学ぶ人は、知識の疑問だけでなく、「この進め方で合っているのか」という学習方法そのものの迷いに必ずぶつかります。担任講師のコーチングや直接相談は、そこで立ち止まらずに軌道修正するための仕組みです。
私の見方では、約30万円の差額で買っているものの中心は、追加の5講座というより、この「迷ったときに頼れる環境」です。予備試験の学習は年単位の長期戦。途中で計画が崩れたときのリカバリー手段を最初から組み込んでおく価値は、初学者ほど大きいのではないでしょうか。
合格特典の対象になるのもフルだけです。特典を選ぶ決め手にすべきではない、と先ほど述べたとおりですが、フルを選ぶ理由が他にすでにあるなら、最後のひと押しと捉える分には健全でしょう。
ライトが向いている人
一方、次のような人ならライトが有力な選択肢になります。
- 他校で一通り学習した経験がある人
- 自分で学習計画を立てて回せる人
- 学習時間が限られ、講座を絞って取り組みたい人
- 費用をできるだけ抑えたい人
アガルートがライトの対象者として挙げるのは「他校からの乗り換えを検討している方」と「学習時間がなかなか確保できない方」です。
すでに基礎学習の経験があり、自分の弱点や学習ペースを把握できている人なら、答練と個別サポートを外して費用を抑える判断は十分に合理的だと思います。
実際、教材の骨格と主要な添削は、フルと同じものが手に入ります。「アガルートの教材と添削で学びたい。ただし伴走は自分には不要」と言い切れる人にとって、ライトの費用対効果は高いでしょう。
逆に、初学者が費用面だけを理由にライトへ流れるのは慎重になったほうがよい、というのが私の意見です。質問50回・コーチングなしの環境で、年単位の学習を自走できるか。この問いに即答できないなら、次節の議論も読んだうえで判断してください。
「ライトで十分では?」
ここまで読んで、こんな疑問を持った人もいるでしょう。「講座の骨格も主要な添削も共通なのだから、約30万円を節約してライトでよいのではないか」と。
もっともな指摘です。実際、他校での学習経験があって自走できる人にとっては、その判断こそ正解だと私も思います。繰り返しになりますが、ライトはしっかりとした骨格を備えたプランであり、選んだからといって「安物買い」にはなりません。
ただ、これから法律学習を始める人には、2つの点を考えてから結論を出してほしいのです。
第一に、差額の中身は講座の数ではなくサポートの厚みだということ。学習が順調に進んでいる間、コーチングや直接相談の価値はなかなか実感できません。
しかし学習が停滞したとき、方向を誤っていたとき、それに気づかせて軌道修正してくれる仕組みがあるかどうかは、年単位の学習では大きな差になりえます。
保険と似ていて、必要性を痛感するのは多くの場合、計画が崩れた後です。後からフルへの変更を相談する道はあるにせよ、崩れてから立て直すより、崩れにくい環境を最初から備えておくほうが安全だと私は思います。
第二に、フルとライトのコスト差は、状況次第では逆転する可能性があるということ。フルだけが合格特典の対象であり、合格して要件を満たせば税抜価格分の返金を受けられるからです。
返金を当てにするべきではないと繰り返し述べましたが、「差額の約30万円をどう評価するか」という比較の文脈に限って言えば、フル側にだけこの可能性が付いている事実は考慮に値します。
それでもなお「自分は自走できる」と判断できるなら、ライトは賢い選択です。大切なのは、価格の安さそのものではなく、自分の学習スタイルとの相性で決めること。この軸さえ外さなければ、どちらを選んでも後悔は小さいはずです。
この記事のまとめ
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- フルとライトの違いは「5つの講座」「添削・質問の量」「個別サポート」「合格特典」「価格」に集約される
- 総合講義300から論文過去問演習までの骨格と主要な添削は両プラン共通
- ライトの添削減は、ライトが答練を含まないことを反映している
- 合格特典(全額返金)は要件付きの制度であり、プラン選びの決め手にしない
- 初学者や伴走がほしい人はフル、他校経験者や自走できる人はライトが基本線
- 差額によるアップグレードも可能
フルとライトのどちらを選んでも、手にする教材のコア部分は同じです。だからこそ最後の決め手は、教材の優劣ではなく、あなた自身の学習スタイルにあります。
自分の独学耐性を過大評価も過小評価もせず、等身大の自分に合うプランを選んでください。納得ずくで選んだプランなら、長く険しい予備試験への道のりでも、迷いを最小限にして学習へ集中できるはずです。


