2018年から資格対策通信講座の研究を続けている杉山貴隆です。
「司法試験や予備試験の受験対策をしたいけど、アガルートとスタディングのどちらが良いのか判断が難しい」
そんな悩みを抱えている方は多いようです。どちらも魅力的に思えるからこそ迷ってしまいますよね。
私はアガルートとスタディングの司法試験・予備試験講座を実際に受講しました。今回は受講経験をもとに両者を比較しつつ、上記の疑問に答えたいと思います。
先に比較表と結論を示すと次の通りです。
アガルート | スタディング | |
---|---|---|
価格 | △ 高額 | ◎ 安価 |
合格実績 | ◎ 合格者多数 | △ 合格者少ない |
講義動画 | ○ たくさん学べる | ○ わかりやすい |
テキスト | ○ 紙+オンライン | ○ オンラインのみ |
問題演習 | ◎ 物量で攻める | ○ 普通 |
学習サポート | ◎ 十分なサポート | △ 有料質問のみ |
モバイル受講の しやすさ | △ 限定的 | ◎ 外でも快適学習 |
口コミ・評判 | 実際に受講して レビュー | 実際に受講して レビュー |
公式サイト | アガルート 公式サイト | スタディング 公式サイト |
以下で詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
アガルートとスタディングを7項目で徹底比較
アガルートとスタディングの司法試験・予備試験講座はそれぞれが複数のプランを提供しています。ここでは私が実際に受講した次の2つのプランを比較します。
- アガルート
- 予備試験最短合格カリキュラム
- スタディング
- 予備試験合格コース(総合)
ちなみに上記2つはいずれも「予備試験」という名称になっていますが、内容としては司法試験対策を兼ねたプランです。ゆえに、以下の比較は司法試験の対策講座を検討している方にとっても参考になると思います。
価格
第一の比較項目は価格です。価格面ではスタディングの圧勝となっています。両講座の価格を確認してみましょう。
アガルートの予備試験最短合格カリキュラムの受講料は839,520円(税込金額、2023年6月現在)。
スタディングの予備試験合格コース(総合)の受講料は128,000円(税込金額、2023年6月現在)。
スタディングはアガルートの6分の1ほどの価格であり、差額は約71万円。スタディングはアガルートよりもずっと受講を始めやすいと言えます。
逆に言うと、敢えて高額なアガルートを選ぶのであればそれだけの理由や付加価値が欲しいですよね。「そういうものがあるのかどうか?」という視点で比較の続きをご覧いただければと思います。
合格実績
第二の比較項目は合格実績です。合格実績についてはアガルートがかなり優秀であると断言できます。
アガルートが公表している合格実績は次の通りです。
- 司法試験の合格者占有率:45.3%
- 予備試験の合格率:全国平均の4.9倍
- 「合格者の声」掲載数:641名分掲載
これに対しスタディングの合格実績は次の通り。
- 司法試験の合格実績:不明
- 予備試験の合格実績:不明
- 「合格者の声」掲載数:23人分掲載
アガルートの合格実績は誰が見ても優れていると評価できる内容です。これまで多くの合格者を輩出してきた講座であることがわかりますし、今後もそうであることを期待できます。
他方、スタディングの合格実績は公表されていないため、合格者占有率や合格率は不明です。合格者の声が掲載されていますので「真面目に学習すれば合格できる講座だ」ということはわかりますが、掲載数がアガルートよりもずっと少ないことは見逃せません。
価格の比較のところで「敢えて高額なアガルートを選ぶのであればそれだけの理由や付加価値が欲しい」と言いましたが、合格実績がまさにこの点にあたると私は考えます。
大勢の合格者を輩出してきたアガルートを選ぶことによって、自分が合格する可能性を最大限に高められる。そう思えるところにアガルートを受講する理由と価値があるんです。
講義動画
第三の比較項目は講義動画です。私はアガルートとスタディングの講義動画を視聴して「どちらにも一長一短がある」と感じています。
まず「わかりやすさ」について言うと、スタディングのほうがやや勝っています。そう思うのはスタディングの講義がスライドを提示しながら進んでいくからです。
法律の学習を進める際はさまざま概念や法律同士の関係に習熟する必要がありますが、スタディングの場合、それが図式化されたものが講義動画中で示されます。視覚的な理解を深めつつ学べるわけです。
他方、アガルートの講義動画でスライドが提示されることはありません。講師が話をする姿が映っているのが基本です(講義回によってはテキストが映し出される場合や板書がある場合もあり)。
そのため常に自分で「今テキストのどの部分の話をしているのか」を探す必要があります。余計なところに意識を割くことになるのでスッと頭に入ってきづらいときがあるんです。
このように「講義のわかりやすさ」の面ではスタディングに分があります。しかし次に示すように「講義の量」の面ではアガルートに軍配が上がります。
- アガルートの講義時間
- 約900時間
- スタディングの講義時間
- 約370時間
アガルートの総講義時間はスタディングの総講義時間の倍以上です。このことは「講義から学べる量がアガルートとスタディングでは大きく異なる」と言い換えても良いでしょう。講義視聴によるインプット学習を重視している方の場合、この違いは大きいです。
以上をまとめると「講義のわかりやすさはスタディングが上」「講義の分量ではアガルートが上」ということになります。
テキスト
第四の比較項目はテキストです。ここではテキストに関してアガルートとスタディングの共通点・相違点をお伝えします。
まず共通点はどちらのテキストも講義を聴くことを前提とした「レジュメ型」であることです。つまり細かい解説は講義にまかせてあり、テキストには要点のみが端的に書かれています。
そうすることでテキストに載っている文章の量を大幅に抑えています。おかげで復習でテキストを読む際もスピーディに情報を読み取れるのでありがたいです。
共通点をさらに挙げると、図表が適度に盛り込まれている点、フルカラーである点も両講座で同じです。
以上の点から考えても、私が実際に読んでみた実感としても、テキストの内容の理解のしやすさについてはアガルート・スタディング間で同程度であると考えます。
テキストに関してアガルートとスタディングで大きく異なっているのは紙媒体で提供されているかどうかという点です。
アガルート | スタディング | |
---|---|---|
紙のテキスト | あり | なし |
オンラインの 電子版テキスト | あり | あり |
アガルートを受講すると、たくさんの紙のテキストが送付されてきます。そしてそれと同じだけの分量のオンラインテキストも利用できます。
他方、スタディングのテキストはオンラインのみで、紙のテキストは一切ありません。冊子タイプのテキストをオプションで買うこともできないため、完全にオンラインに特化した講座になっているんです。
この違いは人によっては学習のしやすさに大きく影響すると思います。特に紙のテキストの経験しかない人がスタディングを受講すると、全く慣れないオンラインテキストでのみ学習することになり、あまり捗らない結果になってしまうと予想されるため要注意です。
オンラインテキストの話題が出たので、その機能面をもう少し深堀りしておきましょう。両講座が提供しているオンラインテキストは使い勝手がかなり異なっています。
アガルートの オンラインテキスト | スタディングの オンラインテキスト | |
---|---|---|
ページ内への 書き込み | 書き込み可 | 書き込み不可 |
ページ外の メモ機能 | メモ機能なし | メモ機能あり |
スマホでの 読みやすさ | スマホだと読みづらい | スマホでも読みやすい |
文字サイズの 記憶 | 文字サイズを 記憶しない | 文字サイズを 記憶する |
横断検索 | 横断検索可 | 横断検索可 |
ダウンロード | 不可 | 不可 |
アガルートのオンラインテキストの良いところは直接書き込めるところですね。線を引いたり備忘録を書いたり、紙の本に書き込むのと同じように扱えます。スタディングは直接書き込めないので、メモを取りたいときはメモ機能を使うことになります。
スタディングのオンラインテキストの良いところは小さい画面でも読みやすいことです。たとえるならスタディングは「WEBサイトを読んでいる感じ」、アガルートは「PDFを読んでいる感じ」というところでしょうか。
以上見たように、テキストについてはアガルートとスタディングで違いが大きいです。基本的に「自宅で学習時間がとれる人はアガルートのテキストが合う」「外出先での勉強が中心になる場合はスタディングが合う」と考えていただければと思います。
問題演習
第五の比較項目は問題演習です。私は国家試験の合否は「過去問・予想問の反復演習の量」でほとんど決まってしまうと考えており、非常に重視しています。
ではアガルートとスタディングではどのくらいの分量の問題演習を実施できるのでしょうか? ここでは話を簡単にするために、司法試験・予備試験においてより重要度が高い論文式試験の問題演習に限定して話を進めます。
結論から言うと、アガルートのほうがスタディングよりもずっと多くの問題を解くことができます。次に示す通りです(数値はいずれも2024年度合格目標講座のもの)。
- 重要問題習得講座 450問
- 予備試験 論文過去問解析講座 117問
- 旧司法試験 論文過去問解析講座 245問
- 予備試験答練 28問
- 合計 840問
- 論文対策講座 基本フォーム編 35問
- 論文対策講座 予備試験実践編 55問
- 合計 90問
アガルートはスタディングの約9倍の問題演習が可能です。ここにアガルートの論文問題重視の姿勢がはっきりと表れています。アガルートの優れた合格実績を支えているのは間違いなくこの論文問題の演習量でしょう。
価格の比較のところで「敢えて高額なアガルートを選ぶのであればそれだけの理由や付加価値が欲しい」と言いましたが、この「問題演習」の部分もそれに該当していると私は考えています。
上では論文式試験の問題演習に話を限定しましたが、短答式試験の問題演習についても触れておきます。両講座で次の数の短答問題を解くことができます。
- 短答過去問解説講座Ⅰ 1,099問(暫定値。後で増える可能性大)
- 短答過去問解説講座Ⅱ 645問(暫定値。後で増える可能性大)
- 合計 1,744問
- スマート問題集 1,803問
- セレクト過去問集 1,095問
- 合計 2,898問
一見するとスタディングのほうが問題の量が多いように見えます。しかしスタディングの「スマート問題集 1,803問」は一問一答○×形式であり、実際の短答試験の問題形式とは大きく異なっている点を考慮しなくてはなりません。
より公平に比較するならスマート問題集5問で短答問題1個分と数えるべきです。そうすると上記「スマート問題集 1,803問」は「スマート問題集 360問」と評価することになります。
- スマート問題集 360問
- セレクト過去問集 1,095問
- 合計1,455問
このように考えると、アガルートで解ける短答問題が合計1,744問に対しスタディングで解ける短答問題が1,455問となり、短答問題の演習量に関してもアガルートのほうが上回ることがわかります。
学習サポート
第六の比較項目は学習サポートです。学習サポートとは受講生の学習を支援する補助的な機能のうち、講師やスタッフが直接関わるもの(たとえば質問制度など)を想定しています。
結論から言うと学習サポートに関してはアガルートのほうが充実しています。予備試験最短合格カリキュラムの受講生が受けられる主な学習サポートは次の通りです。
- 質問制度(視聴期間中400回まで)
- オンライン添削(合計111通)
- 学習カウンセリングチューター(オンライン面談によるお悩み相談)
- ホームルーム(毎月1回の特別動画配信)
学習に対する影響が大きいのはやはり質問と添削でしょう。質問については「400回まで」とかなり余裕のある上限設定になっています。添削も111通あり「これだけやればイヤでも十分な実力が付く」と思えるボリュームです。
スタディングの予備試験合格コース(総合)の受講生が受けられる主な学習サポートは次の通りです。
- 質問制度(ただし有料チケット制)
スタディングは受講料を抑えるため、学習サポートが最小限の内容になっています。もう少し具体的に言うと「質問はできるが、その他のサービスはない」という状況です。
質問する際は有料の「Q&Aチケット」を都度消費します。チケットの1枚あたりの値段は1,000円~2,000円程度(まとめ買いの枚数により上下します)。質問するごとにコストがかかるとなると、残念ながら気軽には質問できそうにないですよね。
添削は多くの司法試験・予備試験講座が提供していますが、スタディングにはありません。論文答案の添削を受けたい場合は別途他社の答練講座等に申し込む必要があるでしょう。
このように、学習サポートの面ではアガルートがスタディングに大きな差をつけています。
モバイル学習のしやすさ
第七の比較項目はモバイル学習のしやすさです。
自宅以外の場所(勤務先や学校、通勤通学時の電車内等)でスキマ時間を使って学習できれば、そのぶん合格する可能性も高まるでしょう。しかし快適な学習のためにはスマートフォンで利用できる学習機能と、その操作性の高さが強く求められます。
この点、アガルートは残念ながら最低限の機能と操作性しか備えていないため、モバイル学習にはやや不向きであると言わざるを得ません。
- スマホで講義動画を視聴できる(操作性はいまひとつ)
- スマホでテキストを読める(操作性はいまひとつ)
- スマホで問題演習ができない(2024年1月から「短答セルフチェックWebテスト」が開始される予定だが、未知数)
- スマホで使える学習専用アプリが無い(学習はSafari・Chrome等のブラウザ上で行う)
アガルートは「モバイル学習もできなくはないが、大きな期待はできない」と見ておくのが良いと思います。
他方、スタディングはモバイル学習特化型の講座だけあって、スキマ時間を最大限に活用できる機能と操作性があります。
- スマホで講義を視聴できる(操作性は良好)
- スマホでテキストを読める(操作性は良好)
- スマホで問題演習ができる(自動採点機能や間違った問題のみ復習する機能なども実装)
- スマホで使える学習専用アプリがある(ブラウザで学習することも可能)
モバイル学習のしやすさに関しては文句なしにスタディングが優れていると評価できます。
アガルート/スタディングがおすすめなのはこんな人
以上見てきた比較を踏まえて、アガルートとスタディングがそれぞれどんな人におすすめなのか、私の考えを述べていきます。
アガルートは「覚悟を決めた人」向け
アガルートは合格実績が非常に優れており、いくつもある司法試験・予備試験対策講座の中でもトップクラスに合格を期待できる講座です。
そのぶんテキストや問題集の分量も多く、生半可な気持ちで申し込むとたちまち挫折してしまうことでしょう。
逆に「この先1~2年はプライベートの全ての時間を学習に充てて、絶対に合格する!」と覚悟を決めて申し込むなら、良質な教材と各種の学習サポートを駆使して高品質な学習を年単位で継続できます。
試験対策に自分自身のフルパワーを注ぎ込み、最短期間で合格をつかみ取りたいならアガルートを受講してください。
受講料が高額であることに二の足を踏む人もいるでしょう。
しかしながら、1日あたりに換算すれば1,000円~2,000円前後ですから、決して高額ではありません。それに法曹の年収を考えれば投下資金は余裕で回収できます。
合格すると決めているなら、アガルートの受講料は必要かつ健全な自己投資であると考えるべきです。
スタディングは「まずは適性を見極めたい人」向け
スタディングは受講料が安く、誰であっても受験勉強をスタートしやすいのが最大の魅力です。
加えて、講義動画の視聴やテキストの読み込み、過去問演習といった日々の作業も全てスマートフォン1台で完結します。受講開始後もあまり肩ひじ張らずにスキマ時間で学んでいけるようになっています。
こういったスタディングの特徴を活かせるのは「法曹資格に興味があるけれど、この分野が自分に合っているのかはまだわからない。まずは少額の資金で試験対策を始めたい」と考えている人です。
スタディング司法試験・予備試験講座を受講するうちに「法律の学習は興味を持って取り組める。これはいける!」と思えたら学習を継続しましょう。そうやってスタディングをメインで使って司法試験や予備試験に合格した人も存在します。
逆に「自分には無理…」と思えたら離脱します。そうしたとしても金銭的ダメージはたったの10万円前後。これより安く済む講座は他にないですし、この程度の金額であればアルバイトでもすればすぐに取り返せますよね。
だから「まだ覚悟が決まっているとは言えないけれど、まずはやってみよう」という意識の方はスタディングを受講してください。最初の一歩を踏み出して、走りながら次に進むべき道を検討しましょう。
この記事のまとめ
今回はアガルートとスタディングの司法試験・予備試験講座を比較しました。最後に比較表をもう1度お示しすると、次の通りです。
アガルート | スタディング | |
---|---|---|
価格 | △ 高額 | ◎ 安価 |
合格実績 | ◎ 合格者多数 | △ 合格者少ない |
講義動画 | ○ たくさん学べる | ○ わかりやすい |
テキスト | ○ 紙+オンライン | ○ オンラインのみ |
問題演習 | ◎ 物量で攻める | ○ 普通 |
学習サポート | ◎ 十分なサポート | △ 有料質問のみ |
モバイル受講の しやすさ | △ 限定的 | ◎ 外でも快適学習 |
口コミ・評判 | 実際に受講して レビュー | 実際に受講して レビュー |
公式サイト | アガルート 公式サイト | スタディング 公式サイト |
この記事を読んでいただことで、どちらの講座を選ぶべきかが見えてきたのではないでしょうか。あなたにとってベストな決断ができることを心から願っています。
以上、参考になれば嬉しいです。