始めて就職したのは29歳だった杉山貴隆です。
今回はこんな疑問に答えます。
30歳だけど、初めて就活をしているよ。不動産業界の営業の求人をよく見かけるけど、どうなんだろう?
ハローワーク等で求人を見ていると不動産業界の求人ってたくさんありますよね。不動産はすごく稼げるとも言われますが、実はブラック企業が多いという話も耳にします。実際のところどうなんだろうと疑問に思う人は多いのではないでしょうか。
この記事では職歴なしのアラサーが就職する場合、不動産の営業職ってどうなの?という話をします。というのも私は30歳目前で初めて就職したのですが、そのとき入社した会社が不動産会社だったんです。
比較的大きな企業で店舗がいくつもありました。職種は賃貸仲介の営業職。わかりやすく言うと「お部屋探しのお手伝い・ハウスアドバイザー」とも呼ばれる仕事です。
実際に不動産業界に飛び込んでわかったリアルな実情を私の感想を交えつつお伝えします。参考にしてみてください。
職歴なしアラサーが不動産営業職を総括
職歴なしのアラサーの就職先として「不動産業界の賃貸仲介営業職」という仕事はどうなのでしょうか。私の実体験に基づいて評価すると次の通りです。
- 就職のしやすさ:◎
- 働きやすさ:△~×
- 給料:○~△
- 業界の将来性:○
- 個人の将来性:人による
上記の評価になった理由を以下で詳しくお伝えします。
不動産賃貸仲介の「就職のしやすさ」
まず就職のしやすさについて。不動産業界の賃貸仲介営業職はかなり就職しやすいです。その理由は慢性的な人手不足。
どうして慢性的な人手不足になっているのかというと、元々ブラックな傾向が強いところに原因があります。入社した人が次から次にやめていくことが常態化しているんです。
不動産会社は「来るもの拒まず、去る者は追わず」で、ついてこれる人だけが残ればそれでいい、という方針をとっていることが珍しくありません。体育会系な雰囲気になじめない人や営業成績で詰められるのがイヤになった人がドンドン辞めていきます。
(私も「この仕事を年単位で続けるのは無理」と感じたので半年で辞めました)
人手が足りていないぶん、職歴が無い人であっても営業マンらしく明るく元気に振る舞えることをアピールできれば採用されやすいと言えます。
資格として宅建を持っていると有利なのか?と気になる人もいると思います。宅建を持っていれば職歴がなくても採用される可能性は高いです。
というのも不動産賃貸の営業をやる人は勉強が苦手な人が多く、すでに入社している営業マンが宅建試験に合格することはほとんど期待できません。
しかし不動産会社は一定数以上の宅建士を確保しなければ法律違反になってしまうので、宅建資格者を強く求めています。したがって宅建を持っていれば賃貸仲介に就職するのは容易です。
不動産賃貸仲介の「働きやすさ」
次に働きやすさについて。不動産業界の賃貸仲介営業職はお世辞にも働きやすいとはいえません。朝は8時前には会社に到着、夜は22時過ぎに退社。それくらいのことは普通だと思ってください。
何でそんなに長時間労働なのかというと、業界の風潮として生産性や効率を上げていく気が無いためです。その一方、年々行政からの規制やコンプライアンス上の遵守事項が増えています。
営業担当者の雑多な仕事は増える一方。そのため労働時間がどんどん伸びており、決して働きやすいとは言えない状況です。
女性が働く場所としてはどうでしょうか。同じ営業職であれば、男性だから・女性だからという理由でどちらかが優遇されることはありません。
この業界で大切なのは性別ではなく数字です。どのくらい成約させ、売上を上げることができるか。営業成績が良ければ女性だって出世でき、店長などの役職に就くことだってできます。
実際、私の周囲には女性の店長の方が多かったです。とはいえ前述のように長時間労働で体力を奪われていく側面があります。その点に関しては明らかに女性のほうが不利です。
不動産賃貸仲介の「給料」
不動産賃貸の営業職の給料は職歴なしの状態で就職してもそこそこもらえます。福岡市くらいの地方都市で正社員をした場合、手取りで20万円~20数万円。私は最初の給料で「こんなにもらえるの!?」とびっくりした覚えがあります。
ただし注意するべきは残業制度です。長時間労働になりがちな業界ですが、働いたら働いただけ給料がもらえるわけではありません。みなし残業・固定残業といった「残業代込み」の給与制度になっていることがほとんどだと思います。
その場合、長く働いたところで給料は1円も増えません。私が勤めた会社もそういう給与形態だったので、勤めているうちにモチベーションがかなり下がりました。
営業がうまい人は契約がとれて、そのぶん作業量も増えます。そういう人は出勤日だけでは業務が終わらないため、休日出勤までして仕事をせざるを得ません。そんな光景をたびたび見かけました。
そしてたとえ休日出勤をしても給料がもらえるわけではないです。これはどう考えても違法ですが、実態としてはそれが普通でした。
以上のことから「給料はそこそこもらえるけれど、時間給に直すとそれほど良いわけではない」というケースが多いと思います。
宅建の資格をもっていて、その会社の専任の宅建士として登録を済ませれば宅建手当がつくことが多いです。手当の額は1~2万円くらいが相場で3万円あれば御の字。私が勤めていた会社でも宅建士には2万円くらいの手当を支払っていました。
不動産賃貸仲介の「業界の将来性」
不動産賃貸仲介の業界は今後も当面安定していると考えて良いと思います。
IT化が急速に進行している現代では、色々な業界で変化が進んでいますよね。たとえば自動車業界は自動運転の普及で大きく変わると言われています。コンビニなどの小売業界も数年後には無人レジが当たり前になっているでしょう。
一方で不動産賃貸の業界はどうかというと、自動化の波がやってくる!という雰囲気は全然ないです。その理由は営業マンとお客さんとの信頼関係が成約のためには重要だからだと考えられます。
部屋を借りるために不動産屋に行くと分かるのですが、営業マンが好印象の人物だと安心して契約できます。逆に印象のよくない営業マンが自分の担当だと、不安でとても契約なんかできません。
営業マンの仕事は実はお客さんとの関係づくりなんです。こういった仕事はAI等で代替するのが難しいので、不動産業界の営業マンは今後も必要とされる職種だと見ています。
もちろん、数十年のスパンで見たら不動産賃貸の世界も色々な変化をしていくと思います。しかし今後5年・10年程度で業界が一変するとは考えにくいです。
事実、私が賃貸仲介を離れてからもう5年くらい経っていますが、聞くところによれば何も変わっていない様子です。
不動産賃貸仲介の「個人の将来性」
不動産賃貸仲介という仕事をあなたが仮に続けたとして、個人としての将来性はどれほどのものでしょうか。人によってかなりの違いがあると私は思います。
賃貸仲介の営業職がハマる人とそうでない人がいるからです。たとえばこの仕事を始めた人の中には、物件や地理を覚えるのが楽しくて、お客さんともすぐ仲良くなって、ドンドン成約が続いてしまう人がいます。
そのように良い意味でハマってしまった人は売上に応じた追加支給の給料(歩合、インセンティブ)が増えますので、かなり稼げるでしょう。
そして働いて稼いでというループを回しているうちに、副店長、店長、エリアマネージャーと昇格して、さらに給料が上がます。人によっては会社を辞めて独立し、自分で不動産賃貸仲介事業を立ち上げる人もいます。
反対にハマらなかった人どうなるでしょうか? ハマらなかった人の代表は私です。私は自分では営業職がそこそこできると思い込んで不動産業界に入ったのですが、全く営業に向いていませんでした。
お客さんとのやり取りがうまくいかず、全く契約がとれず、仕事の覚えも悪く、かなりのダメ社員っぷりでした。そんな中で先輩社員の方々を見ていると、入社後1~2年経過しても数字が伸びない人が上司にひどく詰められたり退職勧奨されたりしていました。
私は「あれは数年後の自分の未来だ」と感じて恐ろしくなりました。そして入社後半年で「ここは自分の居場所ではない」と判断して退職しました。
ハマれば天国、ハマらなければ地獄。それが不動産賃貸仲介営業職の仕事です。あなたはどちらになりそうですか?
おわりに:リスクを認識した上で応募しよう
今回は「職歴なしアラサーが不動産営業(賃貸仲介)に初就職した実体験を語る」というテーマでお伝えしてきました。正直なところ職歴なしの人が最初に就職する職業としてはおすすめしたい気持ちとおすすめしたくない気持ちと両方あります。
「職歴を作りやすい」という意味ではおすすめできます。初対面の人が相手でも会話ができる程度のコミュ力があれば就職できますので。
試しに1~3年くらいやってみて、ハマれば続ければ良いですし、ハマらなければ他の仕事を探せば良いのかもしれません。転職を検討するときには「職歴アリのアラサー」になっていますので選択肢は広がります。
一方で働きやすさや給料の面で言うとこの業界は良いとは言えません。ブラックになりがちです。もし私のようにあまりに短いスパンで仕事を辞めてしまうと、それは社会的には良く思われないため、その後の転職活動で不利になる可能性もあります。
以上をまとめると、それなりにリスクがあることを覚悟した上で「早めに職歴を1社作りたい」と考える人は賃貸仲介営業職にチャレンジしてみると良いでしょう。
以上、参考になれば嬉しいです。