宅建試験に独学で一発合格した宅建士杉山貴隆です。
過去問演習の繰り返しの回数に関しては「3周やればいい」「5周やれば十分」「いや10周」など色々な意見があるようです。どの意見を信じればいいのか迷ってしまいますよね。
私はそういった意見のどれにも従う必要はないと思っています。ではどうするのが良いのか? 今回は宅建の過去問を何周回すべきなのかを検討します。独学で高得点を取って合格できた私の意見をぜひ参考にしてみてください。
宅建の過去問は何周回すべきか
宅建の過去問は何周回すのが良いのかというと「人それぞれ必要なトレーニング量は違うので、データをとってそれをもとに決める」のが答えです。言い換えると「3周やればいい」とか「5周やれば大丈夫」という具合に一律には決められません。
短距離走とか長距離走といったスポーツに置き換えて考えるとわかりやすいと思います。たとえば「100メートルを○秒で走りたい!」と目標を決めたとしますよね。その目標を達成するのに必要な練習量はどのくらいでしょうか。
100メートルダッシュを100回? 200回? そんなふうに一律には決められない、というのは何となく想像がつくと思います。なぜなら筋肉量や運動神経の良しあしが各人で全く異なるからです。
どのくらいのトレーニングの量が適切かは人それぞれ。とすればまずは100メートルダッシュを実際に走ってタイムを計るなどして目標タイムに近づけつつ、必要なトレーニング量を割り出していくのが正攻法です。
宅建の過去問演習も同じように考えていけばOKです。具体的なやり方を以下で確認しましょう。
データの取り方
過去問を何周するか決めるためのデータの取り方をひとことで言うと、1年分の過去問を解き終わるごとに、1問ずつ正解・不正解を記録します。
年度ごとのデータが必要になるので「年度別に収録された過去問題集」を用意してください。そしてエクセルやGoogleスプレッドシートを使って次のような表を作ります(無理ならノートに手書きでもOK)。
問題番号 | 1周目 | 2周目 | 3周目 | 4周目 | 5周目 |
---|---|---|---|---|---|
問01 | |||||
問02 | |||||
問03 | |||||
問04 | |||||
問05 | |||||
問06 | |||||
問07 | |||||
問08 | |||||
問09 | |||||
問10 | |||||
問11 | |||||
問12 | |||||
問13 | |||||
問14 | |||||
問15 | |||||
問16 | |||||
問17 | |||||
問18 | |||||
問19 | |||||
問20 | |||||
問21 | |||||
問22 | |||||
問23 | |||||
問24 | |||||
問25 | |||||
問26 | |||||
問27 | |||||
問28 | |||||
問29 | |||||
問30 | |||||
問31 | |||||
問32 | |||||
問33 | |||||
問34 | |||||
問35 | |||||
問36 | |||||
問37 | |||||
問38 | |||||
問39 | |||||
問40 | |||||
問41 | |||||
問42 | |||||
問43 | |||||
問44 | |||||
問45 | |||||
問46 | |||||
問47 | |||||
問48 | |||||
問49 | |||||
問50 | |||||
不正解の数 | |||||
正解の数 | |||||
合格点 |
- 縦方向に問題1から問題50までの記録欄を作る
- 横方向に1周目から5周目までの記録欄を作る
- 表の下のところには「正解の数」などの集計欄を作る
たとえば令和元年度の過去問用に上の表を作ったとします。初めて令和元年度の問題を解いたときは「1周目」のところに正解・不正解を何らかの形で記録します。同じ年度の問題を2回目に解いたときは、「2周目」のところに正解・不正解を記録します。
* * *
実例を見ていきましょう。私が「平成24年度の過去問を解いた記録」として残してあったものです。
私は面倒くさがりなので「正解した問題」に関しては何も記録せず、不正解だった問題だけ「1」と記録していました。表の下部にある集計欄のところがわかりにくいかもしれないので、もう少し説明します。
集計欄の「誤答数」「正答数」「合格点」は次の手順でして数値を表示します。
- 誤答数
- 「1」を足し合わせることで不正解の数を表示する(エクセルのSUM関数を使えば一瞬で計算できる)
- 正答数
- 「50-誤答数」という数式で正解数を表示する
- 合格点
- 平成24年度の合格基準点である「33」を手打ちする
上記の表から、次のことが読み取れると思います。
- 平成24年度の1周目の不正解数は17、正解数は33(ギリギリ合格点)
- 平成24年度の2周目の不正解数は5、正解数は45(合格点を10点以上 上回った)
- 平成24年度の3周目の不正解数は2、正解数は48(満点にかなり近づいた)
こんな感じの表を年度ごとに作っていきます。
何周解けば良いのか決める方法
どの年度でも48点以上取れたらその時点で過去問演習を終了してOKです。
前掲の「平成24年度の過去問の記録」の例を見ていただくと、3周目で48点をとれています。そのため4周目と5周目は空欄のままです。このように各年度で表を作ってデータをとって48点以上取れたらその年度は終了、としてください。
ちなみに私の場合、過去問は10年分解きましたが、どの年度もだいたい3周ほどで48点以上の点数が取れました。
記録を取るのは面倒?
「毎回、全ての問に対して正解・不正解の記録をとるのは面倒なんだけど…」
そう思う人もいると思います。でもデータを取っておくと、数字をもとに「過去問演習のやめ時」を判断したり、正解数がちゃんと右肩上がりに増えているかどうかをチェックしたりできます。
後で説明するように他のメリットもあります。少し手間はかかりますが、そのぶん役に立ちますので記録をとっておくことを強く勧めます。
なぜ48点が基準なの?
「なぜ48点? 満点の50点を取れるまで続けたほうがいいのでは?」
そういう意見もあると思います。もちろん満点を取るまで解き続けるのが絶対にダメなわけではありません。しかし時間が無限にあるわけではないので「限られた時間で効率よく解答力を上げる」ことを重視しています。
もし「50点を必ずとろう」と思うと、48点や49点という結果だった場合でもまた第1問から解かないといけないことになります。でもすでに48点とか49点とかの高得点を取れているなら、その年度の問題を解くことで得られるものはほとんど残っていないはずです。
であれば同じ問題を繰り返すのではなく、別の年度の問題演習や予想問演習に時間を使ったほうがより多くのものを得られます。以上の理由から50点満点を取るという完璧主義は捨てて48点で良いと私は思っています。
なお48という数字にこだわりや確たる根拠があるわけではないです。40点台後半の点数であれば、あなたの好みや試験日までの残り時間に応じて45や47に変えてもいいと思います。
正解・不正解の記録を取る3つのメリット
宅建の過去問を解いて正解・不正解の記録を取る作業は少し面倒に感じるかもしれませんが、やっておくと次のメリットがあります。
- 正解できない原因を分析できる
- 間違えた問題のみ復習できる
- 達成感が得られる
以下で詳しく説明します。
正解できない原因を分析できる
正解・不正解の記録を取るメリットの1つめは正解できない原因を分析できることです。
先に提示した「平成24年度の過去問演習の記録」をもう1度見てみてください。
不正解だった問に対して「1」と記録されているわけですが「1の現れ方」に何か傾向があるだろうかと考えてみるのです。そうすると次のことがわかります。
- 「2周目に不正解となった5問」のうち3問は1周目も不正解になっている
- 「3周目に不正解となった2問」は2周目もしくは1周目においても不正解になっている
わかりやすくするため印をつけてみました。
平たく言えば同じ問題を繰り返し間違えていることが見て取れると思います。受験勉強をしていた当時の私はこの傾向に気づき、調べてみると他の年度でも同じ傾向があるとわかりました。
さらに「繰り返し間違えている問題には何か共通点があるのだろうか?」と疑問に思い、個別の問題文などもチェックしてみました。すると次のことが明らかになったんです。
- 特定の問題形式のときに早とちりしやすい
- 問題文は「誤っているものを選べ」という形式なのに「正しいものを選べ」という内容だと早とちりして回答するミスを何度もやってしまっていた
- 「法令制限」と「税その他」の分野の不正解が多い
- 自分の苦手分野はテキスト学習の段階でも何となく分かっていたが、過去問の正誤データをみることでやはりこれらの分野が不得意なのだと確信できた
自分の弱点を見極めることができた私は、早とちりを防止するため「問題文に下線を引きながら読む」といった対策を取り入れたり「法令制限」「税その他」の復習をするといった対策をとるなどして実力アップを図りました。
以上のように年度ごと・周回ごとに過去問演習の記録をとっておくと、正解できない原因を自分なりに分析できるようになります。原因がつかめれば、ケアレスミスの低減、苦手分野の克服といった改善策をとることも可能です。
改善の手がかりが得られることは正解・不正解を記録しておくことの最大のメリットであり、得点力の向上に直結します。
間違えた問題のみ復習できる
正解・不正解の記録を取るメリットの2つめは間違えた問題のみ復習できることです。
宅建試験の受験勉強が終盤に差し掛かると「これまでに間違えたことがある問題だけをピンポイントでもう1度解きたい」と思うタイミングが出てきます。このとき過去問演習の正解・不正解のデータが残っていると自分がどの問を間違えたのかが一目瞭然でわかります。
間違えた回数もわかるので、必要に応じて「1度でも間違えた問題は全てもう1度解く」とか「2回以上間違えた履歴のある問題に限ってもう1度解く」といった柔軟な復習が可能になります。
試験の直前期で時間が無いときにデータを活用して解くべき問題を絞り込めると「記録をとっていた過去の自分、ありがとう!」と言いたくなるはずです。
達成感が得られる
正解・不正解の記録を取るメリットの3つめは達成感が得られることです。
特に独学をしている人は受験勉強をどんなに頑張っても誰からも誉めてもらえません。何のフィードバックも無いのでだんだん心が枯れてきます。だからこそ自分で自分を誉めたり満足感を得たりする工夫が大切です。
過去問に取り組んだ記録を残すことはそういう工夫の一つになります。記録を見返すことで「頑張った感」が簡単に得られるからです。「あ~俺、こんなに頑張ったよ…また頑張れ、俺」という感じで自分を励ますことができます。
記録を残しておくと、試験当日の精神状態を安定させることにも役立ちます。というのも、宅建試験の当日、自宅を出る前に記録を見返して「これだけ頑張ったんだから、俺はいける!」と自信を持つことができるんです。
本番直前に良好なメンタルを維持するためにも問題演習の記録をとっておきましょう。
この記事のまとめ
今回は「宅建の過去問は何周回せばいいのか」という疑問に答えてきました。この記事の要点を復習すると次の通りです。
- 過去問を解く際は1問1問の正解・不正解を記録しておく
- 48点以上を取れるようになったらその年度の過去問演習は完了
- 正解・不正解の記録をとっておくと「正解できない原因を分析できる」「間違えた問題のみ復習できる」「達成感が得られる」といったメリットがある
自分の過去問演習の記録をとり、データに基づいた合理的な受験勉強を推し進めていきましょう。
以上、参考になれば嬉しいです。