法律を本格的に学んだ経験はない。それでも、一度で合格したい。そう思ったことがあるなら、同時にこうも考えたのではないでしょうか。「司法試験や予備試験は最難関の試験なのだから、こんな考えは虫が良すぎる」と。
願いを引っ込めては、また可能性を探してしまう。私には、そんな気持ちの行き来がとてもよくわかります。ただ、葛藤を続けているだけでは最初の一歩が踏み出せません。一発合格を狙うと決めるかどうかで、選ぶ教材も勉強を進める速さも変わってくるからです。
そこで今回は、アガルートを受講して一発合格した初学者の体験記を読み込み、その勉強法を予備試験と司法試験に分けて整理しました。この記事を読み終える頃には、あなたの望みがどれだけ現実的なのかを、自分自身で判断できるようになっているはずです。
※本記事は2026年7月時点で入手できる情報を基に作成しています。ただし、引用している受講生の評価は受講当時のものであり、現在とは状況が異なる場合があります。
予備試験一発合格の勉強法

まずは予備試験です。取り上げる体験記は、働きながら合格した社会人、大学在学中に合格した学生、法科大学院に通いながら合格した人の3人分。立場はばらばらなのに、進め方の要所には確かな重なりがありました。
インプットを完璧にしない
最初のテーマは、講義やテキストとの向き合い方です。ここで目を引いたのは、1周目の完成度に見切りをつけるという割り切りでした。
- 「初学者にとって一番大切なことは、最初の数歩を踏み外さないことです。」 【引用元】
私たちは学校の勉強で「理解してから次へ進む」という習慣を長く刷り込まれています。初学者ほどその癖を持ち込みがちですが、ここで挙げた声が選んだのは正反対の進め方でした。
とりわけ重いのは、法科大学院に通いながら合格した受講生の失敗談です。この人は独学時代にインプットへ偏り、法科大学院の既修コース入試に全落ちした経験を経て、アウトプット中心へと転換しています。
「アウトプットこそが最高のインプット」という言葉は、思いつきの標語ではなく、痛い失敗から絞り出された実感にほかなりません。
興味深いのは、この進め方がアガルート側の設計思想と重なっている点です。
アガルートが配布している学習スケジュールや合格ハンドブックにも、分からない箇所があっても立ち止まりすぎず先へ進むこと、講義の段階で知識をすべて理解するのはほぼ不可能に近いことが明記されています。

つまり、上で紹介した受講生たちの「割り切り」は、我流の裏技ではないんです。講座が想定している進め方と同じ方向を向いています。
教材選びの巧拙よりも、使い方が設計と噛み合っていたかどうか。そこに合否を分ける鍵があったのではないか、というのが私の見立てです。これから受講するあなたにとっては、心強い話ではないでしょうか。
ただし、講義を聞き流してよいという意味ではありません。アガルート自身も、ただ聞き流すだけでは時間の無駄になると戒めています。

手と頭は動かす、けれど完全な理解は目指さない。たとえるなら、地図を隅々まで暗記してから歩き出すのではなく、まず一度全体を眺めてから、歩きながら道を覚えていくイメージです。
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 総合講義300

重要問題習得講座と論証集の回し方
演習の軸として名前が挙がったのが、重要問題習得講座(体験記では「重問」「重要問題集」とも呼ばれています)と論証集でした。
- 「はっきり言ってアガルートの論証集を自分なりにカスタマイズして、それを暗記すれば、論文試験で怖いものはありません」「ひたすら繰り返して完璧にする以外に方法はありません。」 【引用元】
- 「あまりに論証集の完成度が高すぎるので、初学者が行間を読むためにおすすめできる講座です。」「キーワード→短文→長文の順で理解していくのがおすすめです。」 【引用元】
- 「アガルートの論証集は、多くの受験生が利用しているので、これをマスターしておけば、他の受験生と差をつけられることはないと思います。」 【引用元】
- 「また、遠方通学をしていたので、通学時間は必ず論証集の使い方講座を電車内で受講し、時間を有効活用していました。」 【引用元】
「何周やればいいのか」という初学者の定番の疑問に、具体的な感触で答えてくれる証言です。もっとも「最低でも5周」は難しい問題についての話であって、全問を一律に5周せよという意味ではありません。数字だけを切り取らないように注意してください。
それよりも本質だと私が感じたのは、1日数問から1日40問へという変化のほうです。ここでは周回数ではなく、1周にかかる時間が縮んでいくことが成長の指標になっています。
始めたばかりの頃にまったく進まないのは、遅れではなく通過点。この見通しを最初から持てるかどうかで、序盤の精神的な消耗はまるで違ってくるでしょう。進歩を測れる物差しを持つこと自体が、長丁場の受験勉強では支えになります。
論証集を「行間を読む」ための講義とセットで使うという位置づけも示唆的でした。完成度の高い論証集ほど記述が凝縮されていて、初学者にはかえって行間が広い。そこを講義が埋めてくれるわけです。
同じ論証集を使う受験生が多いのなら、マスターしておけば差をつけられることはない。この受講生が語る守りの発想も、相対評価である論文式試験では大切な視点だと感じました。
通学電車で論証集の講義を聴き続けたという工夫は、机に向かえない時間の使い方として、働きながら・学びながらの受験にそのまま取り入れられます。
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 重要問題習得講座
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 論証集の「使い方」
短答式試験は「絞り方」で決まる
予備試験の短答式試験は、法律7科目に一般教養科目を加えた8科目・270点満点。この範囲の広さとどう付き合ったのかを見ていきます。
面白いことに、3人が絞った対象はそれぞれ違います。社会人の受講生は問題の範囲を絞らず全年度を回しながら、2周目以降に読む解説の量を絞りました。
大学生の受講生が二分したのは問題の性質で、解く時期をずらしています。法科大学院生の受講生は、直前期に手を出す範囲そのものを削りました。共通するのは「同じ量を、同じやり方で、漫然と繰り返さない」という一点です。
なかでも「峻別」の発想は覚えておく価値があります。論文対策を進めれば自然と固まっていく知識と、短答式試験でしか問われない知識(いわゆる短答プロパー)を分け、後者は忘れにくい直前期に集中投下する。
同じ過去問集を解いていても、分類が違うのであれば取り込む時期を変える、という方法論です。
そして直前期は、何をやるかより何をやめるかの決断でした。複数回間違えた問題と六法だけ、と残すものを先に言葉にしておく。論文についても同じ構えで、見直す対象は論証と苦手な問題だけに絞られていました。
不安で手を広げたくなるのは直前期にありがちですが、この受講生は逆へ舵を切っています。この胆力も、合否を分けた要素のひとつだったのではないでしょうか。

司法試験一発合格の勉強法

続いて司法試験です。ここで取り上げる10人は全員、法科大学院に通いながら学んだ人たちで、多くは法律未修のまま未修コースに入りました。法科大学院という枠組みの中での勉強法だという前提で読み進めてください。
まず1周を終わらせる
法律をゼロから学び始めた人が最初に突き当たるのは、膨大なインプットとの付き合い方です。
- 「まず、総合講義300は、なるべく速く1周聴き終えることを目標に取り組みました。」「講義を聴く上で理解が不十分だなと感じた部分があったとしても該当ページに付箋を貼り、すぐに復習ができるようにするにとどめ、とにかく先に進むことを意識しました。」 【引用元】
- 「結果的に、重要問題習得講座や過去問解析講座等で事例問題を解いていく中で、何度もテキストを復習しているうちに自然と理解ができるようになったのでこのやりかたは正解だったと思います。」 【引用元】
- 「私は最初は問題を見てすぐに解説・答案例を読んでいきました。知識がない段階でする答案構成など長い目で見たら意味のないものだと考えていたからです。」 【引用元】
- 「未修者はとにかく基礎知識が足りていないということを自覚していたので、論文で表現できるものを少しでも早く自分の中に確実に蓄積させる必要があると考えていました。」 【引用元】
先に予備試験の節で見た「立ち止まらない」という方針が、法科大学院の未修者からも同じように語られています。ただ、そこに添えられた説明は同じではありません。
予備試験の節では、講師に言われたとおりに進めたという話や、独学の失敗を経てやり方を変えたという経緯が語られていました。ここでは、基礎知識が足りていないという自覚を出発点に挙げる人がいます。同じ行動でも、それを支える切実さの出どころは一つではないのです。
「知識がない段階でする答案構成など長い目で見たら意味のない」という言葉は、一見すると乱暴に映るかもしれません。しかしこれは、演習を「解くもの」という常識から外し、最初は「読むもの」として扱う発想の転換です。
白紙の前で唸る時間は、知識の蓄積がない初学者にとって投資ではなく消耗になりやすい。ならば答案例を読んで型を先に吸収するほうが早い、という割り切りでした。
一方で、焦らず自分のペースでインプットに重点を置いた、と語る人もいます。速く回すことだけが正解ではありません。両者に共通するのは、不安に飲み込まれる前に「自分はこう進む」という方針を決めていたことです。
8科目も論文を書けるようになるのだろうか。この率直な不安は、法律を学んだことのない人なら一度は抱くものではないでしょうか。だからこそ、先に決めた方針が心の支えになるのだと思います。

教材を絞って繰り返す
続いて、何をどう繰り返したのかを見ていきます。ここで挙げる声では、教材を広げるより、決めた教材を繰り返す選択が目立ちました。
- 「高速性の重視、論証集への知識の一元化および使い倒しが純粋未修である私が1発合格できた最大の要因であると実感しています。」 【引用元】
教材を絞るとは、他をいっさい見ないことではなく、繰り返す軸を1つに決めることです。そしてここで挙げた声では、その軸に重要問題習得講座を据えた人が複数見受けられます。
網羅性、答案例の質、回しやすさ。この3点が繰り返しに耐える教材の条件であり、重問がそれを満たしていた、というのが体験記から読み取れる評価でした。
私が注目したのは、フル起案をしないという進め方です。答案を書く力をつけるための演習なのに、答案を書かない。一見矛盾していますが、狙いを絞った使い方だと考えると筋が通ります。
問題集では論点抽出と論証想起の回数を最大限に稼ぐ。1問への滞在時間を圧縮したからこそ、各科目10周以上という反復が現実になったわけです。実際に手を動かして書く経験のほうは、演習書や過去問、答練といった別の機会に積んだと語る人もいました。
知識の集め方も人それぞれでした。論証集に書き込んで一元化した人もいれば、問題集の模範解答から自分なりの型を覚えた人もいます。
教材のどれを選ぶかより、復習の入口を1つに固定するという行為そのものに意味があるのでしょう。迷ったらここへ戻る、という場所を持つことが、教材を絞る勉強法の実体だと私は整理しています。
他方で、回した回数はかなり少なかったと振り返る人や、論証の反復暗記に距離を置いて現場の思考力を優先した人もいました。
回数が少なくても論証や基本原則が頭に残ったのはなぜか。前者の受講生はその理由を、講義の説明が論理的で、原則や論証のひとつひとつに納得しながら理解できたことに求めています。
回す速さも回数も、それ自体が目的ではない。この2人の声は、その当たり前のことを思い出させてくれます。
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 総合講義100
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 重要問題習得講座

過去問と採点実感を読み込む
司法試験対策で存在感を増すのが過去問、そして法務省が公表する出題趣旨・採点実感です。
- 「私は短答の学習は繰り返すうちに単調なものになってしまう危険があると考え、どうせ短答の学習を行うならば、時間を効率的に使って短答と論文の学習を関連付けながら同時に行うことを意識しました。」「問題の肢ごとに、仮にこの問題が論文で問われた場合にはどう答案に書くかということを意識して解いていました。」 【引用元】
- 「私は司法試験過去問を法科大学院のゼミ等を通じて2年分ほどしか解いていなかったため、今になってはもう少し過去問を解いておくべきだったと考えています。」 【引用元】
司法試験には、採点する側の考え方を受験生自身が読める公式資料があります。法務省が公表する出題趣旨と採点実感です。
出題趣旨は予備試験の論文式についても公表されていますが、採点実感まで読めるのは司法試験のほう。答案のどこが評価され、どこが物足りないと映ったのかを、初学者であっても一次情報で確かめられます。
知識の蓄積で先行者に届かなくても、評価基準の理解では同じ土俵に立てる。過去問と趣旨・採点実感を早くから読み込む勉強法は、この構造を利用したものだと言えます。
私が見事だと思ったのは「せめて過去問を解く回数だけは上回り」という一節です。総量では勝てないと認めたうえで、勝負する土俵を1点に絞る。初学者の戦略として、これほど腹の据わった割り切りはなかなかありません。
全部で追いつこうとして全部が中途半端になるより、どこで追いつくかを決める。この考え方は科目や教材を問わず応用が利くはずです。
一方、過去問は2年分ほどだったと振り返る人もいます。この人は、司法試験の論文式が相対評価であることを踏まえ、受験生の多くが解ける基本問題を確実に取ることで過去問消化量の不足を補ったと自己分析していました。
過去問絶対主義でもなく、基本網羅絶対主義でもなく、自分の残り時間から逆算して比重を決めた点が学びどころです。
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 司法試験 論文過去問解析講座
法科大学院の授業との両立
法科大学院に通いながら合格した人にとって、講座は授業と時間を取り合う存在でもありました。
- 「法科大学院の定期試験対策にもアガルートアカデミーの教材は役に立っていたので、この教材は司法試験合格に必要な内容が詰まっているのだろうと思います。」 【引用元】
- 「未修でも1回で合格できたのは、法科大学院に入学前に総合講義100を何度も聴いたため法科大学院の予習に耐えられる実力をつけることができ、法科大学院の授業以外での自習の時間を確保することができたのが大きいと思います。」 【引用元】
- 「私の通っているロースクールは,予備校軽視の風潮が強く,それに流され,2年度前期はアガルートを使用せず,学校の授業を,先輩のノートと基本書を読んでそれを理解するという勉強法をとりました。」「期末試験で酷い成績をとってしまったため,後期からはまた,総合講義100を聴き,重要問題習得講座の解答例を読むという勉強法をとりました。」 【引用元】
授業の予習復習は重く、講座に割ける時間はどうしても限られます。この時間の取り合いをどう捌くかは、法科大学院に通う初学者にとって勉強法そのものだと言ってよいでしょう。
体験記を並べてみると、長期休暇に寄せる、授業をペースメーカーにする、と配分の工夫はさまざまでした。
なるほどと感じたのは、入学前に講義を聴き込んでおいたという先取りです。入学後に授業と講座を両立させようとするのではなく、入学前に講座を進めて予習に耐える力を先に作る。順序を入れ替えることで、取り合いそのものを緩和しています。
これから法科大学院ルートを考える人には、真似しやすい形ではないでしょうか。
もうひとつ、周囲の空気に流されて教材から離れ、成績を落として戻ったという告白も貴重です。あくまで一人の受講生の、一つの学校での出来事ですから、一般化はできません。
それでも、いったん決めた軸を深く考えずに手放すことの怖さを、これほど率直に教えてくれる声は多くないと思います。
教材が法科大学院の定期試験対策にも役立ったという声と併せて読むと、授業と講座は奪い合うだけの関係ではなく、噛み合えば互いを補強する関係にもなり得るのでしょう。
参考【アガルート公式】司法試験・予備試験講座 法科大学院入試・法曹コース最短合格カリキュラム
一発合格は特別な人だけなのか
ここまで読んで、こう感じたかもしれません。一発合格できたのは、もともと地頭のいい特別な人たちだったのではないか、と。もっともな疑問ですし、体験記という性質上、その可能性を完全に否定することはできません。
ただ、数字は少し違う景色を見せてくれます。令和7年の司法試験では、最終合格者1,581人のうち1,197人が受験1回目でした。司法試験に限れば、一発合格は合格者の中でむしろ多数派なのです。
他方、同じ年の予備試験は、出願した人のうち最終合格まで到達したのが約2.9%でした。こちらは受験回数を問わない合格率なので、先ほどの数字とは性質が違います。それでも、関門の狭さは十分に伝わってくるはず。
同じ一発合格でも、予備試験のそれははるかに重い言葉であり、簡単だと言うつもりはありません。そのうえで、体験記の本人たちがどう語っているかを見てください。
ここに挙げた本人たちは、勝因を才能に求めていません。最も不利なグループだったと自認する人が方法と教材を挙げ、やる気の出ない日を数えきれないほど抱えた人が継続を挙げています。
ここで挙げた声から見えてくるのは、特別な人が受かったというより、進み方を決め、揺らいでもそこへ戻り続けた人が受かったという姿です。あなたに必要なのも、特別な頭脳より先に、この記事で見てきたような「決めごと」なのだと私は考えています。

この記事のまとめ

最後に、13人の体験記から見えた勉強法を振り返ります。
- インプットは1周目で完成させず、演習の中で理解を育てる
- 教材は広げず、繰り返す軸を1つ決める
- 1問に長く留まらず、回す速さの変化を成長の指標にする
- 予備試験の短答式試験は、同じ量を同じやり方で繰り返さず、投入の仕方に濃淡をつける
- 司法試験は過去問と出題趣旨・採点実感を早い段階から読み込む
- 法科大学院ルートなら、授業と講座に割く時間の配分を早めに決めておく
一発合格という言葉は華やかですが、その中身をたどってみると、地味な決めごとを積み重ねた日々でした。だからこそ、これから始めるあなたにも再現の余地があります。
なお、アガルートの司法試験・予備試験講座には志望ルート別のカリキュラムが用意されているので、予備試験ルートで行くのか法科大学院ルートで行くのか、自分の進路に合わせて選んでみてください。
最初の数歩を正しく踏み出せるかどうかは、歩き出す前の今日、何を決めるかにかかっています。13人が残してくれた足跡を、あなたの一歩目にぜひ役立ててください。


