「37条書面」イコール「契約書」…とはならないワケ

ズレ
ややマニアックな話。

契約が成立したときに宅建業者に交付義務が生じる「37条書面」。これは、要するに契約書のことなんだ、とよく言われます。

あるいは、もっと正確に「契約書は37書面を兼ねることが多い」とも言われます。

でも、それって一体どういうことなのでしょうか。「兼ねることが多い」というからには、「兼ねないとき」もあるのでしょうか。

そもそも、この2つを分離・独立させておく意味はあるのでしょうか。兼ねることが多いのであれば、いっそのこと、宅建業者は「契約書」に所定の事項を記載して交付せよ、っていう法律でもいいじゃん!という気がしませんか。

でも、そうなってはいない。一体なぜなのか?

この問題、私が宅建を学習したときにずっとひっかかっていたナゾでした。私と同じように、なんとなく不思議に思いながらも、「そういうものなのかなぁ…」とやり過ごしている人は多いのではないでしょうか。

謎のまま放置すること2年。最近になって、ようやくこのあたりのことが腑に落ちてきました。あぁ、そういうことなんだと妙に納得しています。

私なりの理解の仕方ですが、当たらずとも遠からずだと思いますので、シェアします。

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契約書の本来の姿とは

プライベート

話を分かりやすくするため、「一般人の売主Aと買主Bの不動産売買取引を、宅建業者Cが媒介する」という、よくあるシーンを思い浮かべてください。

宅建学習者のあなたならご存じのように、民法上、契約は口頭での意思表示で成立させることができます。なので、不動産の取引をするにあたって、売主A・買主Bが契約書を作る義務というのは、特にありません。

でも、売主・買主が契約内容を後々忘れてしまうことも考えられます。そうなったときに備えて、契約書を作成することが慣例になっています。

このように、契約書は一種の備忘録に過ぎませんから、その内容というのは、基本的に、売主・買主間で納得できればそれでいい、と言えます。

だから極端な話、第三者が見ればどうでもいいような事柄が契約書に盛り込まれていたって構いません。たとえば、売主Aの買主Bに対する愛情(?)とか、買主Bが取引対象物件にどれほどの熱意を感じているかとかを、詳細に書き綴ってもOKです(普通はしませんが)。

また、第三者から見れば必要な情報でも、売主・買主間で書面に残しておきたくない事項であれば、省略することだって構いません。たとえば、取引金額を載せるなんて野暮ったいぜ、と当事者が思えば、載せないことにしても罪に問われたりはしません。

本来、契約書はそういう「私的な内容のもの」なのです。

さて、契約書が売主A・買主Bの私的な文書だとすると、第三者に過ぎない宅建業者Cが契約書の内容にクチを出したり、そこに自分のところの宅地建物取引士をして記名押印させたいと考えるのは、実はものすごくおかしな話だということになります。

例えて言うなら、AとBが婚姻届を出そうとしているときに、たまたまその二人がバイト先で仲良くなるきっかけを作ってくれた(でもあまり好きになれない)バイトリーダーCが「俺を証人として書け。印を押させろ。」と言っているようなものです。確かにあなたに義理はあるけど、そんなお節介は要らないよ…って気分になりますよね。

また、売主や買主が、「契約書の内容は他人には見せたくない!」と思う可能性すらあります。そう言われたときには、取引を仲介する業者はどうすることもできません。だって、契約書はこの人たちのプライベートな文書なのですから。

このように、契約書というのは売買の当事者間で完結できる私的な文書であって、そこに宅建業者が入り込んでくるのは道理として変なのです。

37条書面の意義

防止措置

でも、宅建業者は、自分たちが不動産取引に関わる以上、トラブル防止の一定の措置をとっておきたいと考えます。

お金をもらって取引を仲介するんだから、テキトーな仕事はできません。それに、後々になって、契約内容に関して売主・買主が揉めてしまえば、そのとばっちりを受けてしまう可能性もあります。

そこで初めて必要になってくるのが、37条書面と言われるものなのです。この書面で、不動産の取引に必要な最低限のことを宅建業者が書面に起こして、両者に交付しておくことにします。

そうすれば、仮に契約書の内容を宅建業者が確認したり取り決めたりできなくても、宅建業者としてはトラブル防止の措置をきちんと取りましたよ、と胸を張れるというわけです。

契約書と37条書面がいったん分離させてあるのは、私が思うにそういう理由です。

実務における契約書と37条書面の取扱い

ちょっと怠けて無視する

実務では、通常、契約書の内容を宅建業者が確認しないということはありません。

むしろ、宅建業者のほうが主体となって契約書を作ります。というのは、売主や買主は、不動産取引の素人であることが多いですから、契約書を作ろうと思っても、何を取り決めればいいのかよく分かっていません。なので、不動産取引に慣れている宅建業者が契約書作成を代行するのが通例です。

そして、37条書面に記載せよとされている内容は、契約の根幹の部分ですから、これを契約書の内容の一部として取り込んでしまっても、何ら問題ありません。そこで、37条書面に記載すべき事項は全部契約書の中に含めておくことにして、これを37条書面を兼ねた書面とする、という実務が行われているというわけです。

このように、契約書の「私的な側面」というのは、実務では無視してしまいます。三者が納得しているので、それでも全く問題ありません。

実務で契約書と37条書面が分かれるとき

分かれる

では、契約書とは独立して37条書面を作成するケースというのは、実際のところあるのでしょうか。私が知人から相談を受けた例をお話しします。

店舗の賃貸借契約の事例です。貸主・借主はともに法人、つまり会社でした。で、どういう理由なのか深くは聞きませんでしたが、借主側が、「契約書に宅建業者の名前を載せたくない」ということを言いだしたというのです。

宅建業者の名前を載せたくないというのは、つまり契約当事者以外の名前を契約書に記載したくないということです。当然、宅地建物取引士の名前も載せたくないということでしょう。

これでは、「取引を仲介する宅建業者は、宅地建物取引士をして契約書に記名・押印させなければならない」という宅建業者の義務を果たすことができません。その知人はハタと困ってしまいました。

でも、よく考えれば、契約書に宅建士をして記名・押印させるのは、その契約書をもって37条書面とするためにやっているわけです。だから、本来は無くても良いはずの行為です。

なので、この事例の解決方法としては、まず契約書はその借主の希望通り、宅建業者の名前や宅建士の名前を載せずに作ってしまえばよい。その上で、その契約書とは別に37条書面を作成すれば問題ない、という結論に至ったのでした。

レアなケースですが、そういうことも時折あるようです。

まとめ

契約書と37条書面の違いは何か。

契約書は、売主・買主(または貸主・借主)間のプライベートな書面。

他方、37条書面は、宅建業者の責任のしるしです。

実務では、プライベートな書面に宅建業者がお邪魔して、責任のしるしとして印を押させてもらっています。そうしたほうが、全員の手間が省けるからいいよね!という感覚。

「契約書は37条書面を兼ねる」ってそういうことなんです。

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