宅建試験に独学で一発合格した宅建士杉山貴隆です。
前回に引き続き「宅建の独学を効率よく進める方法」についてお話ししたいと思います。今回取り上げるのはインプット学習の効率化です。
インプット学習とは宅建試験の問題を解くために必要な基礎知識を頭に入れる学習のこと。具体的にはテキストを読んでいくこと指しています。
どうすればインプット学習を効率化できるでしょうか。私の考えをお伝えします。ぜひ参考にしてみてください。
インプット学習を効率化する方法
宅建独学のインプット学習を効率化するのに有効な方法は次の3つです。
- 自分に合ったテキストを選ぶ
- ノートをとらない
- 暗記しない(理解する)
以下で順番に見ていきましょう。
自分に合ったテキストを選ぶ
インプット学習を効率化する方法の1つめは自分に合ったテキストを選ぶことです。
宅建試験の対策テキストは色々なものが出版されています。その中で自分に合ったテキストを入手できれば、テキストをドンドン読み進めて最短時間で読了できます。
逆に自分に合わないテキストを使ってしまうと、なかなかテキストを読み終えることができず、いつまで経っても次に進めません。インプット学習を効率よく進めるためにはテキスト選びがとても重要なんです。
自分に合ったテキストと言われてもどんなテキストが自分に合っているのかよくわからないかもしれません。でも選ぶ方法は簡単です。
なるべく大きな書店に足を運んで資格関連コーナーに行きます。そうすると宅建試験用のテキストがたくさん並んでいる棚があるはずです。テキストを1冊ずつ手に取って軽く読んでみてください。
テキストごとに文章の読みやすさが驚くほど違っていることに気づくと思います。図表・イラストの量や雰囲気、テキストの厚みといった点でも、テキスト間でかなりの違いがあるとわかるでしょう。
できるだけ多くのテキストをざっとチェックして「このテキストなら最後まで読めそう」と思えたものを1冊ピックアップしましょう。それが「あなたに合ったテキスト」です。ぜひ書店で実践してみてください。
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「でも、いちいち本屋に出かけるのも面倒だし… ネットで紹介されているおすすめテキストで良いんじゃない?」
そう思う人もいると思います。もちろん人の意見を参考にするのは良いのですが、最終的には自分の目で確認して決めることを私は勧めます。というのもどのようなテキストを読みやすい・理解しやすいと感じるかは人それぞれだからです。
たとえば私自身はどちらかというと「文章が少しくらい多めになっても良いから、言葉できちんと説明してほしい」と感じるタイプで、文章が多めのテキストを好みます。
一方で「文章が多いとよくわからない。図解中心のほうが視覚的に理解できて良い」と感じる人もいて、そういう人は図やイラストが多く盛り込まれたテキストを好みます。
自分がどんなテキストを良いと思うかは実際にテキストを手に取って開いてみないとわからないものです。
宅建のテキストを読み終えるには時間がかかりますし、一読した後も復習のために使う機会が何度もあります。だからこそテキストを選ぶ際は他人のおすすめを鵜呑みにすることは避け、自分の感性にフィットするものを自分の目で見極めることが大切です。
ノートをとらない
インプット学習を効率化する方法の2つめはノートをとらないことです。
ノートをとらない理由は2つあって、1つは「ノートをとるのに時間がかかり過ぎる」こと。もう1つは「ノートをとっても問題を解けるようにならない」ことです。
これらの理由については私自身の受験経験からお伝えしていこうと思います。
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受験対策を始めた頃の私は「自分は書くことで理解するタイプである」という認識を持っていたため、宅建試験の勉強でも一生懸命ノートをとりました。テキストを1章分読むごとに、その内容をノートにまとめていたんです。
その結果何が起こったかというと、テキストを一読するだけで2~3ヶ月くらい時間がかかってしまいました。
当時の私は、毎日ノートを書きながら「いくらなんでも時間がかかり過ぎだ」「他のことをする時間が無くなったらどうしよう」と不安を感じていました。
幸運にも私は受験勉強のための期間を半年ほど確保していたので、何とかテキスト学習を終えて、その後は過去問演習等の時間をとることができました。
もし最初から3~4ヶ月しか確保できていなければ、おそらく学習時間が不足してしまい一発合格はできなかっただろうと思います。
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さて当時の私は「ノートをとったからには、このあとの問題演習が相当はかどるはずだ」と思っていました。しかし実際に過去問演習をやってみると全くと言って良いほど解けないことがわかり驚きました。
「あんなに一生懸命書いて勉強したのに、なんで解けないの?」とショックを受けたことを覚えています。今なら解けない理由がわかります。テキストを読んで内容をノートに記すことと宅建試験の問題を実際に解くこととは全然違う作業なのです。
「スポーツの指南書を読んで早く走るための知識を得る」のと「実際に早く走る練習をする」のとは違います。もちろん実際に早く走れるようになるためには実際に走るトレーニングのほうが有効でしょう。
宅建も同じで、ノートなどとらずにさっとテキストを読み流して、過去問や予想問を多く解いたほうがずっと効率的な勉強になるはずなんです。このことは私の宅建試験の受験対策における最大の反省点となりました。
ちなみに私はこの反省を別の国家試験の受験対策で活かすことができました。というのも宅建試験に合格した翌々年、私は管理業務主任者試験の独学をすることにしたんです。
その際のインプット学習ではノートは一切取らずサクサクとテキストを読み終えました。それでもそこそこ高い点数をとって一発合格できたので「やはりノートなど要らなかったのだ」と確信できました。
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以上述べたように、ノートをとることは膨大な時間を使いますし、その割に試験問題を解く力はほとんど伸びません。独学を効率的に進めるためにインプット学習の際はノートをとらないようにしましょう。
理解が不十分な点も残ってしまうかもしれませんが、勉強を続けていくうちに理解できるようになっていきます。思い切ってノートを手放してテキストを読み進めてください。
暗記しない(理解する)
インプット学習を効率化する方法の3つめは暗記しない(理解する)ことです。
実はインプット学習の段階でテキストの内容を暗記する必要は全くありません。もちろん宅建試験の本番のときまでには問題を解くのに必要な少なからぬ量の知識を記憶している必要があります。
ではどの段階で知識を記憶すればいいのかというと、インプット学習を終えた後、アウトプット学習を実施していくときです。次回予定している各論2:アウトプット学習の効率化で紹介しますが、自然なやり方で強固な記憶を作れますので心配無用です。
インプット学習の段階ではむしろ理解することを重視しましょう。
理解するとはどういうことでしょうか。宅建試験の学習では不動産取引に関係する数々の法律・制度を学びますが「なぜその法律が必要なのか」「そういう制度になっている理由は何か」をおさえることが理解することだと言えます。
たとえば宅建業法を例にしましょう。この法律がなぜ必要なのかというと「慣れない不動産取引で消費者が不当な扱いを受けたり、損をしたりしないため」です。消費者を守るための法律なんですね。
そして宅建業法は「不動産会社に強制的に宅建士を雇わせる」という制度や「宅建士が重要事項説明書や契約書に記名・押印する」といった制度を提供しています。
そういう制度になっている理由は何かというと「個々の契約を不動産取引の専門家(=宅建士)がチェックすることにより、消費者保護が実現できる」と考えられるからです。
このように「なぜその法律が必要なのか」「そういう制度になっている理由は何か」を追求するようにしましょう。大抵はテキストに書いてありますし、書いていない場合でも自分なりにネットで調べれば答えは見つかります。
理解することを徹底すると「日本の法律ってうまくできているなぁ」と感じて、勉強自体も楽しくなるはずです。
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逆に理解することをせず、暗記にばかり気持ちが向いてしまうとどうなるでしょうか。単語帳を自作して覚えようとしたり、即席の語呂合わせで何とかしようと頑張ったりするのですが、結局は忘れてしまうでしょう。
人間は忘れる生き物なので、どうしようもありません。覚えても覚えても忘れてしまうので非常に効率が悪いです。
それならばいっそ覚えることはやめて理解に徹しましょうというのが今回提案しているやり方です。そのほうがインプット学習が効率よく進みます。
なおインプット学習の段階で理解に努めておくと次のアウトプット学習の段階でも良いことがあります。それは理解という基盤の上に記憶を作れることです。
理解した上で記憶すると非常に長持ちします。圧倒的に忘れにくいです。インプット学習の段階で理解に徹しておくことはアウトプット学習の生産性を劇的に高めてくれます。
この記事のまとめ
今回は「宅建の独学を効率よく進める方法」というテーマに関してインプット学習の効率化の側面を述べてきました。この記事の要点を復習しましょう。
- 自分に合ったテキストを選ぶ
- 書店へ行って、見比べて決めよう
- ノートをとらない
- ノートにまとめる作業は膨大な時間がかかる。でも問題が解けるようにはならない
- 暗記しない(理解する)
- この段階では覚えようとしても忘れてしまうので、ひとまず理解することに徹する
続いては各論2:アウトプット学習の効率化についてお伝えします。ぜひそちらも読んでいただきあなたの独学に取り入れてください。