宅建試験に独学で一発合格した宅建士杉山貴隆です。
宅建業者と宅建士は同じものでしょうか。それとも違うものでしょうか。違うとすれば具体的な違いは?
今回は宅建業者と宅建士の違いについて解説します。この記事を一読していただければ2つの用語の意味を明確に理解できるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
今回はわかりやすさを重視するため正確さは多少犠牲にしています。この記事を読んで得られるのは細かいところまで正確な定義ではなく大まかなイメージだとご理解いただければ幸いです。
宅建業者と宅建士の違い
結論からお伝えすると宅建業者と宅建士は全く異なるものです。それぞれ次のように言い換えられます。
- 宅建業者とは
- 街の不動産会社のこと
- 宅建士とは
- 不動産会社に雇われている法律の専門家のこと
宅建業者と宅建士の関係を図にすると次の画像のようになります。
まず駅前のビル等に入っている不動産会社が宅建業者です(画像上部)。そして不動産会社ではいろいろな人が働いています(画像の左下部)。その従業員の中で法律の専門家の役割を担っているの人材が宅建士です(画像の右下部)。
宅建業者と宅建士の特徴を以下でもう少し詳しく説明していきます。
宅建業者とは
宅建業者とは不動産に関する困りごとや悩みごとを解決してくれる会社のことです。
不動産とは?
そもそも不動産とは土地および建物のことを指します。土地も建物も「動かすことができない財産」つまり「不動の財産」ですので略して「不動産」です。
困りごとや悩み事を解決とは?
では不動産に関する困りごとや悩み事を解決とはどういうことでしょうか。たとえばあなたが「両親の土地を相続したけど、使い道がないので誰かに売りたい」と思ったとします。
でも一般的に不動産は値段が高いので、そう簡単に買い手が見つかることはありません。仮に見つかったとしても契約書をどう書けば良いのか、値段はいくらにしたら良いのかなど検討がつかないことが多いでしょう。
そういうときに街の不動産屋である宅建業者に相談にいくとあなたの代わりに土地の買い手を探してくれたり、契約書作成や値決めのサポートをしてくれます。
無事に土地を売ることができたら、あなたが抱えていた「土地を売りたいけど買い手が見つからない」という問題は解決しますよね。
もちろん宅建業者は営利企業ですのでタダでサポートをしてくれるわけではありません。土地が売れたことの成功報酬として、あなたは宅建業者に手数料を支払うことになります。
このように宅建業者は「不動産を売りたい」「不動産を買いたい」「不動産を貸したい」「不動産を借りたい」と考える人の相談に乗って問題を解決するという仕事をします。
正式名称と意味
ちなみに宅建業者をもっと正確な言葉にすると宅地建物取引業者となります。
宅地建物取引業者という言葉を分解してみましょう。宅地とは土地のことです。建物とはそのまま建物のことです。取引は売ったり買ったりすること(売買)、貸したり借りたりすること(貸借)を指しています。
つまり宅地建物取引業者とは土地・建物の取引の業者という意味であり、それを短くしたのが宅建業者なんです。
宅建業者として活動するには
日本の法律では勝手に不動産会社を作って活動してはいけないことになっています。正式に宅建業者として事業を開始したいなら、きちんと都道府県や国土交通大臣に申請して宅建業免許をとらなばなりません。
免許をとるためには色々な条件を満たすことが必要です。不動産会社の作り方について詳しく知りたい場合は検索して情報を集めるか、不動産業界における独立・開業をテーマにした本を読んでみるのが良いと思います。
宅建士とは
宅建士とは不動産会社に雇われている法律の専門家だと考えていただければOKです。といっても次のような疑問が浮かぶかもしれません。
- なぜ不動産会社が法律の専門家を雇っているのか
- 法律の専門家は弁護士ではないのか
以下で深掘りして答えていきます。
法律の専門家とは?
法律の専門家といえばふつうは弁護士を思い浮かべますよね。たしかに弁護士はあらゆる法律に詳しい万能の法律専門家です。
これに対して弁護士ほど色々なことを知っているわけではないけれど不動産取引の法律に関してはそこそこ詳しいという立ち位置にいるのが宅建士です。
たとえるなら弁護士は服から電化製品まで何でも売っているAmazonみたいなもの。宅建士はファッション用品だけを売っているZOZOTOWNみたいなものです。
弁護士は法律の全ての分野をカバーしていますが、宅建士は不動産取引関連の法律というほんの一部分だけを専門的にカバーしています。
不動産会社が宅建士を雇う理由は?
どうして不動産会社は法律の専門家である宅建士を雇っているのでしょうか。答えは法律でそう決まっているからです。
宅地建物取引業法という法律に不動産会社をやるなら従業員の5人に1人以上は宅建士を雇いなさいと書かれています。なので街の不動産に行くと必ず宅建士が1人以上働いているはずです。
なぜ宅建士を雇う義務が定められているのかというと不動産業界の闇が関係しています。
不動産業は扱う金額が大きいため「法律に違反してでもお金儲けをしたい」と考える悪い人たちが集まりやすいと言えます。そういう悪い人たちが不動産会社をやりだすと私たちはいつ騙されてお金を取られてしまうかわからず、安心して不動産を取引できません。
そこで昔の日本の偉い人々が「不動産会社に法律の専門家をたくさん雇わせよう」と考えました。不動産会社の社内に法律の専門家がたくさんいる状態を作れたら、会社が悪いことをしないように彼らに監視してもらうことができます。
そういう事情があって宅建士の設置義務を定めた法律が作られ、今日まで運用されています。
正式名称と意味
「宅建士」をもっと正確な言葉にすると宅地建物取引士となります。
宅地建物取引士という言葉を分解してみましょう。先に触れたように宅地とは土地のことで建物は建物のこと。取引は売買や貸借のことです。
士はサムライのことですが、現代の日本では法律の専門家のことを呼ぶときに「士」を使うことが多いです(弁護士、司法書士などがその例)。
以上をまとめると宅地建物取引士は「土地・建物の取引に関する法律の専門家」のことであり、それを短くしたのが宅建士です。
宅建士になるには
不動産取引の勉強をしたからといって勝手に宅建士を名乗ると法律違反になってしまいます。宅建士として活動するためには宅建試験に合格し、都道府県に資格登録をする必要があります。
ここで「宅建士のことをもっと知りたい」「宅建試験に合格して宅建試験になりたい」と思ったあなたに朗報です。このブログでは宅建士の就職・収入といったさまざまな話題や宅建試験の勉強法についてたくさんの情報を発信しています。
ぜひ興味のある記事だけでも読んでみてください。きっと有益な情報がいくつも得られると思います。
この記事のまとめ
今回は宅建業者と宅建士の違いについて解説しました。この記事のポイントを復習すると次の通りです。
- 宅建業者とは
- 不動産会社のこと。もう少し言うと「不動産に関する困りごとや悩みごとを解決してくれる会社」のこと
- 宅建士とは
- 不動産会社に雇われている法律の専門家のこと。ただし万能の専門家ではなく「不動産取引の法律にそこそこ詳しい」という立ち位置
宅建業者と宅建士の違いを明確におさえて、不動産業界の構造を理解する手がかりにしましょう。
以上、参考になれば嬉しいです。