宅建試験に独学で一発合格した宅建士杉山貴隆です。
「1年も勉強すればさすがに合格できると思う。だから1年計画で受験勉強を頑張りたい」という声がときどき聞こえてきます。でも私はそのような考えには反対です。
今回は宅建試験の独学を1年計画にしてはいけない理由をお伝えします。1年かけて勉強しようと思っていた方はぜひこの記事を読んでいただき、本当に1年もの時間をかけたほうが良いのかどうかを改めて検討してみてください。
宅建の独学を1年計画にしてはいけない理由
最初に結論を述べておくと、宅建の独学を1年計画にしてはいけない理由は次の3つです。
- 1年前だと教材が出そろっていない
- 期間が長すぎて中盤でダレてしまう
- 学習期間の後半は知識を保つのに余計な時間と労力がかかる
以下で1つずつ説明します。
1年前だと教材が出そろっていない
宅建の独学を1年計画にしてはいけない理由の1つめは試験日の1年前だと教材が出そろっていないことです。
宅建試験の受験対策をする場合、最新版のテキストや問題集を利用するのが望ましいとされています。不動産取引に関係する法律は毎年何かしらの改正が入るためです。
改正された部分が試験で問われることも多いので、もし古いテキストを使って古い知識を仕入れてしまうと、本番で点を落としてしまいます。それを避けるために最新版の教材を使用するのが一般的です。
各出版社の最新テキストはおおよそ1月頃には書店に出そろいます。たとえば2022年10月の宅建試験の受験を考えているなら2022年1月頃です。過去問題集も2月頃にはだいたい出そろっていると考えて良いでしょう。
最新の教材を見比べて自分に合ったものを使って学習すること考えると、試験の1年前の10月あるいは11月・12月に勉強を始めるのは少々早すぎると言えます。
期間が長すぎて中盤でダレてしまう
宅建の独学を1年計画にしてはいけない理由の2つめは期間が長すぎて中盤でダレてしまうことです。
あなたは「今年の年明けに打ち立てた抱負」を覚えていますか? 多くの人は年の初めに「今年こそやってやる!」「必ず○○という目標を達成したい!」と意気込んで抱負を考えますよね。
でも数か月たつとそんな熱い気持ちは綺麗サッパリ忘れてしまうのが普通です。なぜこんなことが起こるのでしょうか。理由は簡単で、1年という期間は1つの目標を決めて活動していく期間としては長すぎるのです。
事実、会社勤めの人は「半期」すなわち6か月単位で個人目標を設定することが多いと思います。もっと短い「月次」の目標がある人もいるでしょう。半期・月次の目標が無いのに年間の目標だけがある人はいないはずです。
ダレることを避け、緊張感をもって仕事を進めるには1年よりも短い期間を設定して取り組むのが良いと言えます。
このことは宅建試験も同じ。試験の1年前の10月半ばに「1年かけてみっちり勉強!」と心に決めたとしても、春頃には気持ちが緩んで緩んで緩み切ってしまいます。もっと短い期間で目標を達成することができないか検討するべきです。
学習期間の後半は知識を保つのに余計な時間と労力がかかる
宅建の独学を1年計画にしてはいけない理由の3つめは学習期間の後半は知識を保つのに余計な時間と労力がかかることです。
1年もの期間があれば、たとえ忙しい人であってもさすがに夏頃には一通りの受験勉強が終わってしまいます。すると何が起こるかというと「宅建試験の当日(10月中旬)まで知識を忘れないように努める」ことが必要になります。
各種の用語や問題の解き方を一度覚えても放っておけば忘れてしまいますから、キープするためにテキストを読んだり、過去問を解いたりといった作業が毎日欠かせなくなってしまうんです。
場合によっては1~2ヶ月、あるいはそれ以上の期間を単に知識を保つことだけに使うことになります。これは非常に生産性の低い行為ですが、やらないわけにもいかないので精神的に苦しいです(私自身、受験直前の最後の1~2週間はそのような経験をしました)。
知識を保つことのみを目的として時間と労力を浪費しないで済むようになるべく試験直前期にちょうど学習が終わるような計画を立てましょう。そのためには宅建試験を1年計画で独学することは避けておくのが無難です。
宅建の独学はいつ始めるのが最適か
それでは具体的にはいつ頃から学習を始めれば良いのでしょうか。答えを言うと必要な学習期間は各人の状況によって変わります。
なので学習期間の考え方と計算方法を必要な期間の解説記事でお伝えしています。一読していただけると嬉しいです。
読む時間がないよ、という人のためにざっくりとした目安だけ以下に述べておきます。話の前提として「宅建試験は300時間くらいの勉強で合格できる」と言われているので、300時間を消化するのに必要な日数という基準で考えてみましょう。
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1日あたり2時間勉強できる場合は300時間を消化するのに150日間(約5か月)かかります。
宅建試験の試験日は毎年10月の中旬です。その5か月前、つまり5月中旬に学習をスタートすればちょうど学習が終わる頃に試験日がやってくるでしょう。
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フルタイムで仕事をしている人は毎日2時間勉強するのは難しいと思います。その場合は平日は1日1時間、土日は1日3.5時間ずつ勉強すると仮定して期間を検討します。
そうすると先ほどと同じように5月中旬にスタートしてちょうど学習が終わる頃に試験日がやってきます。
1日に確保できる時間が極端に短い場合
「うーん、そうは言ってもやることがたくさんあるから、正直、1日30分くらい時間とれたら良いほうかなと思ってる。だから1年計画を考えていたんだけどなぁ…」
そういう人もいるかもしれません。私の考えでは、上記のようなケースでは日々の時間の使い方を見直して、勉強に充てる時間の確保をまずは検討するほうが良いと思います。
そう考える理由は2つ。1つめは1日30分程度しか時間がとれないのであれば、1年かかっても300時間を消化できないからです。
1日30分しか勉強しないとすると、1年365日の間それを続けても確保できる勉強時間は180時間程度です。宅建の合格に必要とされている300時間には全然届きません。
そうして十分な勉強ができないままもし不合格になると「1年もやってきたのにダメなのか…」という思考になってしまい精神的にもキツいと思います。
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理由の2つめですが、1日に30分くらいの時間しか取れない場合、勉強の効率が悪くなるからです。
たとえば過去問50問(試験1回分)を解こうとするとき、初めのうちは第1問から第50問まで解くのに数時間、その後の解説の読み込みに数時間かかります。
でも1日30分しか過去問に取り組めないと、試験1回分を第1問から第50問まで解くだけで何日もかかります。そして解説を読み込むときには既に何の問題を解いたのかを忘れてしまっていて、改めて問題を読み解かなければならない状況となり非効率です。
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以上の理由から、1日あたりの勉強時間があまりに少ない方は1日1~2時間は勉強時間をとれないかどうか可能な限り検討してください。
この記事のまとめ
今回は「宅建試験の独学を1年計画にしてはいけない理由」をお伝えしました。この記事の要点を復習すると次の通りです。
- 1年計画にしてはいけない理由は「1年前だと教材が出そろっていないから」「期間が長すぎて中盤でダレてしまうから」「学習期間の後半は知識を保つのに余計な時間と労力がかかるから」
- 具体的にいつ頃学習を始めればよいかは人により異なる。一例として「1日あたり2時間勉強できる場合は5月中旬から」となる
- 「1日良くて30分しか勉強できなそうだから1年計画にした」という人は時間の使い方を見直すことが先
宅建試験の勉強は単純に期間を長くとればうまくいくものではありません。適切な学習期間を見極め、計画的に取り組みましょう。
以上、参考になれば嬉しいです。