宅建試験に一発合格した宅建士杉山貴隆です。
資格試験を受けるなら合格率を把握しておくのが良いでしょう。合格率を知ることで自分が受験したときどの程度の確率で合格できそうかを予想したり、合格するためにどのくらいの努力が必要そうかを判断したりできるからです。
そこで今回は宅建試験の合格率と合格率に関連するさまざまな情報をお伝えします。たとえば次のような情報です。
- 昭和・平成から令和にかけての合格率の推移
- 宅建試験の対策講座の合格率
- 5問免除対象者の合格率
- 女性の合格率、など
宅建試験の受験を検討している方にとって参考になる情報が得られることをお約束します。ぜひ最後まで読んでみてください。
宅建試験の合格率
近年の宅建試験の合格率は毎年15%前後と覚えておけばOKです。言い換えると受験したすべての人のうち成績が良かった上位15%が合格します。
15%という数字ががピンと来ない人は学校のクラスで例えるとイメージしやすいと思います。40人1クラスの15%は6人です。30人1クラスの15%は5人です。
宅建試験に合格することは言わばクラスで最も頭の良い5~6人の中の一人に自分がなることだと考えておいてください。
合格率の推移
宅建試験が初めて実施された1958年から現在まで約60年の合格率の推移は次の通りです。
実施年度 | 合格率(%) |
---|---|
1958年(昭和33年) | 93.0 |
1959年(昭和34年) | 98.2 |
1960年(昭和35年) | 83.1 |
1961年(昭和36年) | 65.0 |
1962年(昭和37年) | 61.7 |
1963年(昭和38年) | 42.4 |
1964年(昭和39年) | 22.7 |
1965年(昭和40年) | 43.0 |
1966年(昭和41年) | 36.7 |
1967年(昭和42年) | 28.1 |
1968年(昭和43年) | 24.2 |
1969年(昭和44年) | 51.5 |
1970年(昭和45年) | 26.1 |
1971年(昭和46年) | 18.7 |
1972年(昭和47年) | 21.6 |
1973年(昭和48年) | 33.0 |
1974年(昭和49年) | 17.3 |
1975年(昭和50年) | 19.3 |
1976年(昭和51年) | 27.2 |
1977年(昭和52年) | 24.8 |
1978年(昭和53年) | 22.6 |
1979年(昭和54年) | 15.1 |
1980年(昭和55年) | 19.9 |
1981年(昭和56年) | 19.0 |
1982年(昭和57年) | 20.5 |
1983年(昭和58年) | 13.2 |
1984年(昭和59年) | 16.0 |
1985年(昭和60年) | 15.5 |
1986年(昭和61年) | 16.6 |
1987年(昭和62年) | 19.0 |
1988年(昭和63年) | 16.8 |
1989年(平成元年) | 14.9 |
1990年(平成2年) | 12.9 |
1991年(平成3年) | 14.0 |
1992年(平成4年) | 16.0 |
1993年(平成5年) | 14.4 |
1994年(平成6年) | 15.1 |
1995年(平成7年) | 13.9 |
1996年(平成8年) | 14.7 |
1997年(平成9年) | 14.1 |
1998年(平成10年) | 13.9 |
1999年(平成11年) | 15.9 |
2000年(平成12年) | 15.4 |
2001年(平成13年) | 15.3 |
2002年(平成14年) | 17.3 |
2003年(平成15年) | 15.3 |
2004年(平成16年) | 15.9 |
2005年(平成17年) | 17.3 |
2006年(平成18年) | 17.1 |
2007年(平成19年) | 17.3 |
2008年(平成20年) | 16.2 |
2009年(平成21年) | 17.9 |
2010年(平成22年) | 15.2 |
2011年(平成23年) | 16.1 |
2012年(平成24年) | 16.7 |
2013年(平成25年) | 15.3 |
2014年(平成26年) | 17.5 |
2015年(平成27年) | 15.4 |
2016年(平成28年) | 15.4 |
2017年(平成29年) | 15.6 |
2018年(平成30年) | 15.6 |
2019年(令和元年) | 17.0 |
2020年(令和2年)10月 | 17.6 |
2020年(令和2年)12月 | 13.1 |
2021年(令和3年)10月 | 17.9 |
2021年(令和3年)12月 | 15.6 |
2022年(令和4年) | 17.0 |
合格率の推移から次のことが読み取れます。
- 最初の5年間の合格率は60%を超えていた
- その後25年ほどかけて合格率はじわじわ低下し、20%を下回る水準に
- 直近30年間はおおよそ15%から17%の間を推移している
※2020年12月試験の合格率は13.1%であり近年の傾向と比べればかなり低い。ただし当該試験は一部地域で臨時に実施されたものであり、受験者数が通常よりもかなり少ない。そのため異常な値を示したものと考えて無視してよい。
近年の宅建試験の合格率は15%前後であり2割にも満たない数字です。10人いても合格するのは1人か2人のみ。ずいぶん少ないと感じます。なぜ宅建試験の合格率はこれほど低いのでしょうか?
宅建試験の合格率が低い理由
宅建試験の合格率が15%前後と低い理由は政策的なものです。政策的とはどういうことでしょうか。順を追って説明します。
宅建(宅建士)は不動産取引における法律の番人という位置づけの国家資格です。国が資格を創設し維持しているので、いわば関連法令に精通した人材を国の責任において養成しているとも言えます。
適正な不動産の流通と法的秩序を守るため、資格制度を通じて不動産取引の専門家を育てているわけです。この目的を達成するため日本の不動産関連行政の偉い人たちは「きちんと勉強したトップクラスの知識を持つ人々だけを宅建士として認めよう」と考えています。
トップクラスですからかなり絞り込まなければなりません。具体的にどのくらい絞るかは色々な考え方があると思いますが、10人いてもせいぜい1人か2人くらいであれば十分絞り込んでいると言えそうです。
以上のような政策的配慮から宅建士の合格率は15%前後という数値になっています。
ちなみにこの絞り込みによって例年約20万人の受験者から3万~4万人ほどの合格者が生まれています。この数字は国内の宅建資格取得者の需要をちょうどよく満たしており、このことも15%前後という数値を維持する理由となっています。
他資格の合格率と宅建の難易度
宅建は国家資格ですので、みっちり勉強してトップクラスの知識を身に付けなければ合格できない難しい試験です。しかし他の法律系国家資格と比較した場合はそれほど難しいとは言えず、中くらいの難易度だったりします。
その根拠のひとつが合格率の比較です。以下の表を見てください。
資格名 | 合格率 |
---|---|
司法書士 | 3%前後 |
不動産鑑定士 | 5%前後 |
社会保険労務士 | 6%前後 |
マンション管理士 | 8%前後 |
行政書士 | 9%前後 |
旅行業務取扱管理者(総合) | 10~20%前後 |
宅建士 | 15%前後 |
管理業務主任者 | 20%前後 |
貸金業務取扱主任者 | 30%前後 |
旅行業務取扱管理者(国内) | 30~40%前後 |
法律系国家資格を10個ピックアップし、それぞれの合格率を示しました。合格率が小さい順(つまり合格が難しい順)に並べたのですが、宅建資格は下から4番目。
まさに中くらいであり、相対的にはそれほど難しくない水準の難易度であることがわかります。
宅建の難易度については宅建試験の難易度を解説した記事でさらに掘り下げています。
最新年度の合格率予想・合格率速報
宅建試験の合格率は最新の年度でも15%前後の合格率になると予想されます。なぜなら前述のように国の政策によって合格率が一定割合に抑えられているからです。
国土の活用と流通に関して根本的な政策変更があった場合はこの限りではありませんが、そのような政策変更が起こる気配は今のところありません。宅建試験の合格率も現状維持が続くでしょう。
なお合格率は試験実施団体の不動産適正取引推進機構(RETIO)が公式サイトで合格発表日に公開しています。合格率が気になる方はチェックしておきましょう。
通学講座・通信講座の合格率
宅建試験の通学講座(予備校・専門学校)や通信講座の中で受講生の合格率を毎年公表している講座はごくわずかです。講座の名称と公表された合格率を表にしました。
講座名 | 合格率 |
---|---|
LEC 宅建士(通学・通信) | 64.7%(2020年度) |
日建学院 宅建通学コース | 66.1%(2020年度) |
フォーサイト 宅建士通信講座通信講座 | 65.9%(2020年度) |
アガルート 宅地建物取引士試験講座 | 43.3%(2020年度) |
合格率を明らかにしているのはLEC・フォーサイト・日建学院・アガルートの4つのみ。合格率は40~70%台です。
なお上記の講座はそれぞれ独自のやり方で合格率を計算しています。そのため表の数値は一概に比較できるものではありません。あくまで参考程度のものと考えてください。
上記以外の講座は受講生合格率を毎年公表することはしていません。なぜ公表しないのでしょうか? そこには色々なオトナの事情があるのだと思います。そっとしておきましょう。
よくある質問
宅建試験の合格率に関する「よくある質問」に答えていきます。
都道府県別の合格率は?
2022年度の都道府県別合格率は次の通りでした。
順位 | 都道府県 | 合格率 |
---|---|---|
1 | 高知県 | 20.4 |
2 | 福井県 | 20.3 |
3 | 富山県 | 19.2 |
4 | 香川県 | 18.7 |
5 | 山口県 | 18.5 |
6 | 新潟県 | 18.2 |
7 | 東京都 | 18.2 |
8 | 和歌山県 | 18.1 |
9 | 栃木県 | 18.0 |
10 | 岐阜県 | 17.8 |
11 | 兵庫県 | 17.8 |
12 | 愛知県 | 17.7 |
13 | 鳥取県 | 17.7 |
14 | 神奈川県 | 17.6 |
15 | 奈良県 | 17.5 |
16 | 岩手県 | 17.4 |
17 | 埼玉県 | 17.3 |
18 | 石川県 | 17.1 |
19 | 京都府 | 17.1 |
20 | 岡山県 | 17.1 |
21 | 山梨県 | 17.0 |
22 | 長野県 | 17.0 |
23 | 千葉県 | 17.0 |
24 | 静岡県 | 16.9 |
25 | 茨城県 | 16.8 |
26 | 宮城県 | 16.7 |
27 | 愛媛県 | 16.6 |
28 | 宮崎県 | 16.6 |
29 | 青森県 | 16.2 |
30 | 大阪府 | 16.2 |
31 | 三重県 | 16.0 |
32 | 福岡県 | 15.9 |
33 | 山形県 | 15.8 |
34 | 群馬県 | 15.8 |
35 | 広島県 | 15.8 |
36 | 佐賀県 | 15.7 |
37 | 滋賀県 | 15.5 |
38 | 北海道 | 15.3 |
39 | 大分県 | 15.2 |
40 | 鹿児島県 | 15.1 |
41 | 熊本県 | 14.8 |
42 | 徳島県 | 14.6 |
43 | 長崎県 | 14.6 |
44 | 島根県 | 14.0 |
45 | 福島県 | 13.8 |
46 | 沖縄県 | 13.4 |
47 | 秋田県 | 12.9 |
基本的に東京都が第1位になることが多いのですが、2020年10月試験では京都府が第1位。翌2021年度には東京都が第1位に返り咲き。ところが2022年度は東京都は第7位にまで転落し高知県が第1位となりました。
都道府県別の合格率は試験実施団体RETIOが毎年公開しています。
5点免除対象者の合格率は?
登録講習を修了した5点免除対象者(5問免除対象者)の合格率は次の通りです。
実施年度 | 講習修了者合格率(%) | 一般受験者合格率(%) |
---|---|---|
1997年(平成9年) | 19.7 | 14.0 |
1998年(平成10年) | 19.8 | 13.7 |
1999年(平成11年) | 31.6 | 15.3 |
2000年(平成12年) | 24.7 | 15.2 |
2001年(平成13年) | 23.6 | 15.0 |
2002年(平成14年) | 22.1 | 17.2 |
2003年(平成15年) | 24.5 | 15.1 |
2004年(平成16年) | 22.9 | 15.8 |
2005年(平成17年) | 29.0 | 16.0 |
2006年(平成18年) | 25.4 | 15.8 |
2007年(平成19年) | 27.9 | 15.2 |
2008年(平成20年) | 22.6 | 14.8 |
2009年(平成21年) | 26.6 | 15.9 |
2010年(平成22年) | 19.7 | 14.2 |
2011年(平成23年) | 19.3 | 15.4 |
2012(平成24年) | 22.6 | 15.4 |
2013年(平成25年) | 21.0 | 13.9 |
2014年(平成26年) | 24.9 | 15.6 |
2015年(平成27年) | 20.2 | 14.1 |
2016年(平成28年) | 20.0 | 14.1 |
2017年(平成29年) | 19.9 | 14.3 |
2018年(平成30年) | 20.6 | 14.1 |
2019年(令和元年) | 22.9 | 15.2 |
2020年(令和2年)10月 | 19.6 | 16.9 |
2021年(令和3年)10月 | 21.3 | 16.9 |
2022年(令和4年) | 17.3 | 17.0 |
※2020年・2021年に実施された「12月試験」に関しては通常の「10月試験」に比べて受験者数等が大きく異なるため、ここではデータから除外している。
登録講習修了者の合格率は登録講習を修了していない一般受験者の合格率と比べて例年5~10ポイントほど高いのが特徴です。5点免除の効果はかなり大きいと言えるでしょう。
ただし2022年に関しては「登録講習修了者と一般受験者との差がほとんどない」という異例の年となりました。2022年だけの例外的な事象なのか、それとも今後続いていく傾向なのか、見守りたいと思います。
5点免除制度について詳しく知りたい方は5点免除制度の解説記事をご覧ください。
一発合格率は?
一発合格率(受験1回目の人のうち合格した人の割合)は統計データがないため不明です。
参考として合格者のうち1回で合格した人の割合に関してはおおよそ7割程度ではないかと言えるかもしれません。というのもフォーサイト宅建士講座の合格体験記を見ると受験回数の分布が次の通りとなっています。
受験回数 | 人数 |
---|---|
1回目 | 760 |
2回目 | 177 |
3回目 | 94 |
4回目 | 48 |
5回目 | 34 |
合計 | 1113 |
上のデータからフォーサイト宅建士講座の合格体験記を書いた人のうち1回目で合格した人の割合は68.4%です(761÷1113)。
他講座を受講した合格者や独学した合格者についても受験回数の分布が同様であると仮定すれば、合格者のうち1回で合格した人の割合は7割程度だと推定されます。
独学の合格率は?
独学の合格率(独学した受験者のうち合格した人の割合)は統計データがないため不明です。
しかし全体の合格率(毎年15%前後)を上回ることは考えにくいと思います。一般的に独学者はスクールに通う人や通信講座を受講する人に比べて不利な教材・環境で学習しているからです。
また宅建合格への意欲もスクール・講座の利用者に比べれば低い傾向にあると思われます。なので全くの私見ですが、独学の合格率は10%またはそれを下回る程度ではないかと想像しています。
高卒の合格率は?
高卒者の合格率(高卒の受験者のうち合格格した人の割合)は統計データがないため不明です。
とはいえ高卒の方でも合格することは可能です。高卒者が宅建を取れる理由の記事で実例を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
職業訓練の合格率は?
職業訓練の合格率(職業訓練を受けた受験者のうち合格した人の割合)は統計データがないため不明です。
その一方、職業訓練と似た制度で教育訓練給付制度というのがあります。こちらについては次のサイトで講座ごとの合格率を知ることができます。
リンク先のシステムを探索していくと非常に有益なデータが得られるのですが、原則として転載禁止となっておりこの記事に掲載することができません。気になる方はご自身でチェックしてみてください。
主婦や女性の合格率は?
主婦の合格率(主婦の受験者のうち合格した人の割合)は統計データがないため不明です。代わりに女性の合格率であればわかります。
実施年度 | 女性の合格率(%) | 男性の合格率(%) |
---|---|---|
2015年(平成27年) | 16.7 | 14.9 |
2016年(平成28年) | 17.0 | 14.7 |
2017年(平成29年) | 16.8 | 15.1 |
2018年(平成30年) | 16.8 | 15.0 |
2019年(令和元年) | 18.5 | 16.3 |
2020年(令和2年)10月試験 | 19.5 | 16.7 |
2020年(令和2年)12月試験 | 14.7 | 12.3 |
2021年(令和3年)10月試験 | 19.1 | 17.3 |
2021年(令和3年)12月試験 | 16.8 | 15.0 |
2022年(令和4年) | 17.9 | 16.6 |
女性の合格率は男性の合格率に比べ例年2ポイント前後高いのが特徴です。女性の合格率は試験実施団体RETIOが毎年公開しています。
中京大学の宅建合格率は?
中京大学(愛知県)では宅建試験の対策講座を提供しており、その宅建試験合格率は次の通りです。
実施年度 | 合格率(%) |
---|---|
2015年(平成27年) | 78.5 |
2016年(平成28年) | 74.8 |
2017年(平成29年) | 82.8 |
2018年(平成30年) | 71.0 |
2019年(令和元年) | 72.0 |
一般的な通学講座・通信講座の合格率を超えた優秀な値となっています。
明海大学の宅建合格率は?
明海大学(千葉県)には不動産学部不動産学科があり「遅くとも2年次までに宅建試験に合格する」ことを目指したカリキュラムが展開されています。
明海大学の宅建合格率は公開されていませんが、ある口コミサイトでこんな情報を見かけました。
私の年代では約150人が入学し、1年次の宅建合格者は26名、2年次の合格者は15名でした。
この情報が本当だとするとちょっと低いという印象ですが、真偽は不明です。
この記事のまとめ
今回は宅建試験の合格率についてさまざまな情報をお伝えしました。合格率は毎年15%前後と覚えておけばOKです。合格率の推移のところだけ復習しておきましょう。
- 最初の5年間の合格率は60%を超えていた
- その後25年ほどかけて合格率はじわじわ低下し、20%を下回る水準に
- 直近30年間はおおよそ15%から17%の間を推移している
合格率の歴史を見ていくと宅建試験は資格創設当初に比べて圧倒的に合格しづらい試験になっていることがわかります。合格率は今後も下がることはあっても上がることはないでしょう。先延ばしにせず早期に合格できるよう行動していただければと思います。
以上、参考になれば嬉しいです。
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次回は宅建試験の合格点について詳細に解説します。下のブログカードをタップすると移動できます。